Wir sollten nicht mehr aufwachen
私達はもう目覚めるべきではないんだ
Aber, du…
なのにお前は…
bellflower
弐章 ダリア
〜言いようのない不安〜
「かごめ〜犬夜叉君が来てるわよ」
「何で?」
翌朝、少々寝ぼけ眼のかごめにかけられた言葉に、かごめはそれまでの眠気を吹き飛ばし、勢いよく階段を下りた。
「かごめ…」
「何で来てるのよ。今回は…」
「聞いてくれ、かごめ」
「何かあったの?」
いつもの犬夜叉と違い表情が暗いだけでなく、雰囲気も違う事を感じたかごめは直ぐに話を聞く体制をとる。
犬夜叉はそんなかごめを見た後話し始める。
「社の森で…」
「どうしたの?」
「奈落みたいな妖怪を見たって奴がいる」
「えっ…」
奈落という言葉にかごめは過剰に反応し、犬夜叉はそんなかごめを複雑そうな顔をして見た後言葉を続ける。
「今、珊瑚と弥勒が確認しに行ってる」
「わかった。私も帰る。綺梗は…」
「綺梗はこっちに置いといた方がいいだろ」
「そうね…綺梗は霊力も妖力も低いから」
「直ぐに行けるか?」
「うん。ママ〜」
スッと立ち上がり、台所にいる母親へと声をかけるかごめを犬夜叉は黙って見ていた。
「どうしたの?今犬夜叉君の分の…行くのね」
「うん。綺梗をお願い」
「わかったわ。これを持って行きなさい」
「サンドイッチ?」
渡されたバスケットを覗けばそこに入っていたのは多くのサンドイッチだった。
「気をつけてね」
「うん。ありがとう。行こう、犬夜叉」
「おぉ」
母親の気遣いと察しの良さを感じながら、かごめと犬夜叉は骨食いの井戸へと急いだ。
「本当に奈落なの?だって奈落は…」
「俺もよくわかんねぇ。とりあえず、弥勒と珊瑚が帰ってくるのを待つしかねぇな」
戦国時代に辿り着き、村に向かって歩く犬夜叉とかごめに声がかけられる。
「犬夜叉様、かごめ様」
「りんちゃん。どうしたの?」
「楓様が薬草を摘んできてくれって言ったの」
そう言って手に持つ籠をりんは見せる。
籠の中には多種類の薬草が入っていた。
「沢山見つかったね」
「はい」
「じゃぁ、楓ばあちゃんに渡しに行こうか」
「はいっ!」
元気よく返事を返したりんに笑いかけ、かごめはりんと共に楓のいる家へと歩き出す。
1歩遅れて犬夜叉も後に続いた。
「かごめか?早かったな」
「うん。色々あってね」
楓のいる家に入れば、楓がいつものように迎えてくれる。
「奈落だろう?話は聞いとる」
曇りがちなかごめの表情にわざと気付かないふりをしながら楓は言葉を続ける。
「本当に奈落だと思う?」
「何とも言えんな…」
「そうだよね…」
かごめが1人で思案にふけっていると、外から犬夜叉の怒鳴り声が響き、かごめはまたか、と思いつつも外に出る。
「てめぇ、何しに来やがった!?」
「お前などに用などない。どけ」
「何だと…」
「殺生丸様っ!」
りんの声に殺生丸と犬夜叉は刀に伸ばしかけていた手を止める。
「…」
「今日はどうしてここに?」
殺生丸がりんの事を気にかけ、直接では無くとも、事ある毎に数々の贈り物をしていることは楓の村では周知の事実だった。
りんがいずれ殺生丸と共に歩む為に村を出るであろう事も、りんを知る者にはわかっていた。
少々の好奇心と犬夜叉と殺生丸の鉢合わせという最悪の状況に対する恐怖の混ざった視線を村人達は向ける。
そんな村人達も、敵意を剥き出しにし、低く唸る犬夜叉など視界に入らない様子で殺生丸はりんへと歩み寄る。
そして、一定の距離を保ったまま、殺生丸は淡々と告げた。
告げられた言葉にりんは目を見開き、はじかれたように言う。
「りんも一緒にっ…」
「駄目だ」
しかし、りんが全てを言い終わる前に殺生丸の声がりんの声に重なる。
有無を言わさぬ殺生丸の態度に、りんは数秒間殺生丸を見つめた後、再度口を開いた。
「わかりました。りんは殺生丸様の帰りをお待ちしています。ご武運を」
その言葉に答えることは無く、だが、その言葉を途中で遮ることもせずに殺生丸は言葉を聞き終わると来た時の様にゆっくりと
歩いて行った。
「殺生丸も丸くなったわよね」
「けっ」
「犬夜叉は成長が無いわね」
「何でだよ」
「自分で考えて」
「けっ」
不愉快そうにそっぽを向いた犬夜叉に溜息を零すかごめだが、犬夜叉はかごめを見ようとしない。
子供のようにふてくされているのである。
「こらこらやめんか。お前達が言い争っても意味がないだろう」
「楓ばあちゃん、起きて大丈夫なの?」
「この間ちと怪我したくらいで大袈裟じゃ」
「なら良いんだけど…」
不安そうに見つめるかごめに笑いかけ、楓は言葉を続ける。
「それより、綺梗はどうした?」
「私の実家にいるわ。もしも奈落ならまた私達もここから暫くいなくなるだろうし」
「そうか。あちらの方が安全じゃろうからな」
「…」
楓の言葉に表情を曇らせたかごめに気付き、犬夜叉はかごめを見ると大丈夫だ、と言う。
「大丈夫だ、かごめ。奈落が復活したなんて有り得ねぇ」
「そう…だよね」
「万が一復活したとしても、綺梗はあっちの世界にいるから安心だろ」
「うん…」
「安心しろ!奈落が復活してたら俺がもう一度ぶっ倒してやる!」
「うん…」
力なく、それでも無理をして笑おうとするかごめが楓には少々ひっかかる。
普段ならばかごめは弱気になる事も、不安になる事も殆ど無い。
犬夜叉を、珊瑚を、弥勒を・・・仲間を信じているから。
「浮かない顔じゃな。何か不安なのか?」
「凄く…嫌な予感がするの。何でかはわからないけど」
「かごめが心配するのも当然かもしれんな。しかし、今は法師殿達が帰ってくるのを待つしかあるまい」
「うん」
「今はゆっくり休め。休める時に休んでおくべきじゃ」
「そうだね。ありがとう、楓ばあちゃん」
かごめは先ほどよりは幾分ましになった笑顔を楓に返した。
ガタッ
ガタガタッ
夜遅くに本来はかごめの部屋であり、今日は綺梗が使っている部屋で大きな音がする。
その事に疑問を感じたかごめの母は一旦部屋の扉をノックすると、部屋へと入る。
「綺梗ちゃん、まだ起きてるの?早く寝ないと明日起きれなく…」
続くはずの言葉は途中で途切れた。
「草太、お爺さん、綺梗ちゃんを見ませんでした?」
「僕は見てないよ」
「わしもじゃ」
居間へと急ぎ、そこにいた2人に問いかけてみても、2人は綺梗を見ていないと答える。
「どうしましょう…綺梗ちゃんがいないの…」
「え!?」
「いないじゃと?」
居間にいた草太とかごめの祖父はその言葉に驚く。
「物音がしたから見てみたら、綺梗ちゃんがいなかったのよ…どこに行っちゃったのかしら…」
「とにかく皆で捜すんじゃ!」
「うん!」
「はい」
慌しく3人はその場から去り、その場にいたブヨの様子が普段と異なっている事に気付く者はいなくなった。
「駄目だ、こっちにはいないよ!」
「こっちにもいません」
「残るは…井戸、か」
家の中だけではなく、神社の境内まで捜したものの、綺梗は見つからなかった。
そんな3人が最後に辿り着いたのが骨食いの井戸だった。
勢いよく祠の戸を開け、懐中電灯で照らせば、そこには綺梗が倒れていた。
「綺梗!」
「ん…草太兄ちゃん?」
眠そうに眼を擦りながら草太を見る綺梗は普段と変わらない。
「こんな所で寝て…心配したのよ」
「綺梗、何で井戸になんているんだ?」
草太の言葉に綺梗は辺りを見回し、首を傾げる。
「あれ、何でここにいるの?」
「自分で来たんでしょう?」
「来てないよ」
「…とにかく部屋に戻ろう」
「うん…ぁ」
不意に綺梗が立ち止り、自身の手を見る。
「綺梗?」
「綺梗ちゃん?」
「何?」
「どうしたんだ、綺梗?」
「糸が…」
「糸?」
「何も見えんが?」
「だって、私に絡まっ…きゃっ!」
「綺梗!?」
「綺梗ちゃんっ!」
「綺梗!」
「きゃぁぁっ!」
それは一瞬の出来事で、綺梗は糸に絡め取られて井戸の中へと引っ張り込まれた。
3人は慌てて井戸の中を覗き込むが、井戸の底に綺梗の姿は無かった。
「井戸に落ちてしまったぞ…」
「綺梗ちゃん、何かに引っ張られてるみたいじゃありませんでしたか?」
「僕にもそう見えた」
「一体どうなっとるんじゃ?」
We should not wake anymore
However you…
balloon flower
2010.8.23