Ich erwartete Frieden und erhielt es
私は平穏を望み、手に入れた
Deshalb store meinen Schlaf nicht, auch wenn es jeder ist
だから誰であっても私の眠りを妨げるな
bellflower



壱章  ルピナス
〜惜しみない愛情をあなたに〜



かごめが高校を卒業し、戦国時代に戻ってから数年、犬夜叉とかごめの生活は少しだけ変わっていた。

「おかえりなさい、父様」

「おう。元気にしてたか?」

駆け寄ってきた少女の頭をガシガシと撫で、犬夜叉は問う。

「うん!母様と弓の練習頑張ってた」

撫でられた少女はニッコリと嬉しそうに笑いながら答えた。

「かごめより上手くなったか〜?」

「まだ下手なの」

「気にすんな。かごめは今でも下手だからな」

少女を慰めようとするのではなく、本当に思ったことをそのまま言った犬夜叉は次の瞬間地面にめり込んだ。

「ふぎゃっ!」

「父様…」

「私だって前より上手くなってるのよ」

「かごめ〜」

以前より髪を少しだけ伸ばし、巫女の衣装を纏ったかごめが少し怒ったように言いながらどこからともなく現れた。

犬夜叉の恨めしそうな顔など気にせず、かごめは少女の傍まで来ると家へ入るようにと促す。

「明日は私の家に行く日なんだから、犬夜叉はほっといて家に入りましょう。ね、綺梗」

「うん!」

少女・・・綺梗はかごめの言葉に元気よく頷くとかごめの手を取って家へと歩き出した。

1人取り残された犬夜叉は、全身に付いた土埃を軽く叩くと、かごめと綺梗の後に続いた。



「よく来たのぅ」

「いらっしゃい、綺梗ちゃん」

「こんにちは」

骨食いの井戸を抜け、かごめの生家である日暮神社に辿り着いた綺梗とかごめを笑顔で出迎えたのはかごめの祖父と母だった。

「草太はいないの?」

「かごめ、草太はまだ学校よ」

「そっか」

高校を卒業して直ぐに戦国時代に行き、偶にしか現代に帰ることの無くなったかごめにとって学校は懐かしいものであると同時に、 今では少しだけ違和感を覚えるものとなってしまった。

それほどまでに戦国時代に馴染んでしまったということを自覚すると、かごめは少しだけ笑った。

「草太兄ちゃんいないの?」

「直ぐに帰ってくるわよ。かごめ、ご飯の支度手伝って」

「は〜い」

現代に違和感を感じたとしても、家族に違和感を感じる事は無い。

かごめは元気よく返事を返すと台所へと向かう。

そんなかごめを見送り、綺梗は自身の脚へと頭を摺り寄せてくるブヨへと視線を落とす。

「ブヨ〜遊ぼ〜」

「ふなぁご」

ブヨを抱き上げ、綺梗はリビングへと向かった。



「綺梗は良い子だなぁ。そうだ、これをやろう」

「何?」

リビングで大人しくブヨと遊んでいた綺梗は曽祖父に名前を呼ばれ、振り向く。

振り向くと細長い何かを差し出された。

「幸運を呼ぶ天狗の羽じゃ」

「…ブヨ〜」

「こら!猫じゃらしにするな」

「だってこれ…本物じゃない」

スッと目を細め、幼い子供に似つかわしくない冷たい瞳で綺梗は羽を見つめる。

「綺梗…?」

「何?」

「いや…なら、これならどうじゃ?」

「四魂の玉?」

「よく知っておるな」

向けられた視線と言葉がいつも通りの綺梗のものであることに安心し、曽祖父は言葉を続ける。

「父様と母様が言ってるよ」

「そうか。これが無かったらお前の父さんと母さんは出会わなかったんじゃぞ」

「へぇ…」

「これはレプリカじゃがな。お守りにはなる。持って行きなさい」

「ありがとう」

差し出された四魂の玉のレプリカを手にし、綺梗は笑った。



「犬夜叉君も来るかと思ってたのに」

「犬夜叉は今回はいいって。来ようと思えばいつだって来られるし」

「それはそうだけど」

帰宅した草太を交えて夕食を取った後、テレビを見ながら取り留めの無い会話をする。

「姉ちゃん、姉ちゃん達はいつまでいるの?」

「明後日の夕方には向こうに帰る予定」

「えぇ〜もっといればいいのに」

「草太、かごめも向こうで色々あるのよ」

「ちぇ〜」

残念だと言う草太に笑いかけ、また直ぐに来るからと言ったかごめに半円の何かが差し出される。

「かごめ、お前にこれをやろう。幸運を呼ぶ…」

「いらない」

「そっ…そんな…」

バッサリと容赦無く切り捨てたかごめにショックを受ける祖父を草太は生暖かい目で見守る。

「じいちゃん、懲りないね」

「当たり前じゃ!」

「お願いだから綺梗には変なこと教えないでね」

只でさえ知らなくてもいいようなことまで色々と知ってしまっている綺梗にこれ以上余計な事を教えたくないというのは かごめの親心だ。

「四魂の魂の事は知っとったぞ」

「それは話しておかないといけないからね」

「そうか…」

一瞬にしてその場は暗い空気に包まれる。

四魂の玉を巡る戦い、桔梗のこと、それに伴う因縁、悲しみの全てを知るのは直接関わったかごめや犬夜叉達だけではあるが、 かごめを育て、支え、見守ってきた家族達には細かい事を聞かずとも辛く、苦しい事があったのだとわかっていた。

だからこそ、なるべくかごめの前では四魂の玉に関わる話をしないようにしようと決めていた。

「あ〜やめやめ!何か暗い!私はもう寝るね。お休み〜」

そんな空気を払拭させるようにかごめはわざと大きな声で言い、自身の部屋へと戻っていく。

そんなかごめの様子を見て、四魂の玉に関わる話は控えようと各々心に誓った。



I expected peace and obtained it

Therefore do not disturb my sleep even if it is anyone

balloon flower



2010.5.15
BACK | TOP | NEXT