「イ、ザ、兄〜」

正面から走ってきたマイルを素早くかわした臨也に背後からクルリが抱きつく。

「捕(捕まえた…)」

「クルリ!」

「クル姉ナイス!逃がさないよ、イザ兄〜」

クルリと同様にマイルも臨也に抱きつき、逃がさないと力を込める。

「お前ら何だ?いつもは蹴りや突きのくせに」

「そっちの方がよかった?ならそうしようか?」

「違う」

普段の双子の行動ではないからこそ臨也は普段以上に警戒する。

それは、自身が歪めてしまった双子は、臨也の手に余る存在になってしまったか らだ。

「今日イザ兄の誕生日でしょ?だからね、クル姉と一緒に考えたんだよ。イザ兄 へのプレゼントは何にしようか〜って」

「へぇ。それは光栄だ。でもいらないから帰れ」

「ダ〜メ。返品は不可だよ。クル姉!」

「了(いいよ…)」

「ぐっ…何を…」

クルリに抱きつかれて動けない臨也の鳩尾にマイルの膝蹴りが綺麗に入る。

「目が覚めたらプレゼントがあるよ、イザ兄」

「楽(楽しんで…)」

臨也の耳に入ってきたのはそこまでだった。


С Днем Рождения Izaya


「あれ…?」

目が覚めたと同時に臨也は違和感を感じる。

「何、これ…?」

臨也の片足には手錠がかけられていて、その手錠には長い鎖がついている。

その事に驚きつつも、クルリとマイルがやったことだと容易に想像がついた為、 臨也は冷静に鎖をたどり始めた。

鎖を辿り始めて直ぐに臨也はクルリとマイルを心底呪った。

鎖の先には同じ様に片足に手錠がかけられ、その手錠から鎖が延びている静雄が いた。

そして、その鎖は臨也のものと繋がっていた。


「ん…」

静雄が身じろぐと臨也は瞬時にナイフを取り出すが、静雄が起きる気配は無い。

ひとまず安心するものの、いつ静雄が起き出すかわからないこの状況で鎖で繋が れているというのは臨也への死の宣告に等しい。

「マズいな…」

とりあえず静雄から距離を取り、ナイフで鎖を切ろうとしてもビクともしない。

自身の家で鎖に繋がれる事など想定している筈もなく、鎖を切る道具などあるは ずがない。

家を出ようとしても鎖の先には静雄。

「これのどこがプレゼントだよ…」

無意識に吐いた言葉に臨也は疑問を覚える。

「マイルは確かに『目が覚めたらプレゼントがある』と言った。そう考えると静 雄がプレゼントということになる。だがそれは明らかにおかしい。プレゼントは 別にあるって事?」

考えを口に出しながら臨也が考えていると、鎖が少し強く引かれた。

「うそ、起きた?考えも解決策もまだ出来上がっていないのに…」

逃げようにも逃げられない状況であることは変わらず、臨也は仕方無くナイフを 構える。

「臨也?」

「やぁ、シズちゃん。言っておくけどこんな状況なのは俺のせいじゃないからね」

「知ってる」

「ぇ?」

予想外の言葉に臨也は少しだけ動揺する。

「今日は臨也の誕生日だから」

そこで臨也は違和感に気付く。

「お前、誰だ?」

平和島静雄の姿をしていても、ソレが平和島静雄ではないと感じたのだ。

「俺は津軽。マスターに言われて臨也の誕生日を祝いに来た。明日の朝になった ら臨也の鎖を壊して、俺は帰る」

「マスターって?」

「岸谷新羅」

「新、羅…?」

「そうだ。だから臨也、俺を静雄だと思って好きにしてくれ」

頭を鈍器で叩かれたような衝撃が臨也に走る。

混乱して思考が定まらない臨也からナイフを奪い、津軽は優しく抱きしめながら臨也にキスを落とした。




2011.05.04