僕の家のリビングには黒いソファーが2つある。

今大きいソファーには僕が座っていて、パラパラと本のページをめくっている。

一人暮らしであるこの部屋に来客はない。

僕がここに住んでいることは知り合いは誰も知らないし、近所の住人だって僕の立場を知っているから、僕には極力近づかない ようにしている。

だから、本来ならばこの部屋には僕以外の人間がいるはずが無い。

なのに、僕が本に対する集中力を少し失くせば、視界にはブラブラと揺れている子供の足が目に入る。

その僕をじっと見つめている子供こそ僕の部屋に入り浸っている存在。

みー君とかいう今の子供の姿は偽者。

本名を六道骸。

僕に屈辱を味わわせた唯一の人間。


再戦


僕が本を読むのを止め、視線を子供に向けると

「雲雀お兄ちゃん」

なんて満面の笑みで言われた。

「気色悪いから止めてくれる」

「クフフ、僕なりに子供を演じてるつもりなんですけどね。結構大変なんですよ?」

誰がそんな事をしてくれと言った?

「必要無いよ。それより何でここにいるのか聞きたいんだけど」

「秘密です」

「・・・」


ピンポ−ンピンポ−ン

ガチャッ

『何?』

『届けものです』

『そう』

手渡された回覧板を持って部屋の中に戻り、回覧板を置こうとした時だった。

『立派な部屋ですね』

『!』

人の声がして、僕はとっさにトンファーを構える。

気付かなかった…。

人の気配には敏感なはずなのに、全く気づかなかった。

僕の視界の先にいるのは回覧板を持って来た子供。

回覧板に神経がいっていたからといっても、玄関を閉めるときには外にいたはずだった。

『…君、誰?どうやって入ったの?』

『みー君と言います。玄関から入りました』

やはりそのみーくんとかいう子供は玄関から入ってきたらしい。

僕に全く気づかれる事なく。

『みー君?』

『ええ。本名は六道骸と言いますがね』

『!?』

『クフフ、お久しぶりです、雲雀恭弥。もっとも、この姿でははじめましてですけど』

その時の六道骸の(みー君とかいう子供の)顔を僕は一生忘れる事はできないだろう。

そして、奴はあの癇に障る独特の笑みをこぼした。


「ねぇ」

「何ですか?」

「君って犯罪者なんでしょ」

「まぁ、そうですね」

別にどうでもいいといった感じに奴は答える。

「何でそんな子供の姿でくつろいでるの?」

「僕の本当の身体は牢獄の中です。この身体は外で動くには中々良い器なんですよ。まさか子供の身体を操ってるなんて 普通気付きませんし」

確かに、子供の姿になってるなんて思いもよらないだろう。

それに、たいていの奴は子供相手に油断する。

僕は違うが・・・。

「じゃぁ誰も知らないんだ」

「あぁ、アルコバレ−ノは気付きましたね」

「赤ん坊が?」

「えぇ」

奴がその身体に似合わぬブラックコーヒーを飲みながら言う。

何故勝手に僕の家で豆を挽いて、コーヒーをいれているのか疑問に思うが、聞くだけ無駄だろう。

「ふうん。じゃぁ何でここにいるわけ?」

「そうですね…特に何か理由があるわけじゃないです。たまたま家を見つけたからですかね」

「・・・たまたまでこのマンションを見つけたって言いたいわけ?」

「そうですよ」

「…」

「別に貴方が親と離れて暮らしてる理由を聞いたり、波盛中に申請した住所と違うと言ったりしないので安心してください」

「君って本当に最悪だよ」

「褒め言葉ととっておきましょうか?」

「必要ないよ」

「クフフ・・・さて、それではそろそろ僕は消えます。もうこの姿で会うことはありません」

奴はカチャンと小さな音を立ててコーヒーカップをテーブルに置きながらそう言った。

「それはよかったよ。君とはちゃんと決着付けたいからね」

「貴方の力は僕の足元にも及びませんよ」

「今試しても良いんだけど?」

「児童虐待で訴えますよ?」

「中身が児童じゃないから平気だよ。それに警察だって僕には逆らわないからね」

「クフフ」

「何がおかしい」

「何でもありません」

奴はそう言った後ソファーを立って、玄関へと歩いていく。

そうしてドアノブをガチャッと回し、ドアを少し開き、僕に背を向けた状態で、言った。

「雲雀恭弥」

「…」

「次に会うとき僕たちは…  」


「お久しぶりですね、ボンゴレ、アルコバレーノ」

「六道骸!?ちょ、なんでお前がここにいるんだよ!?」

「てめぇは監獄に入れられてるはずだろうが!?」

「よぉ、久しぶりだな」

「チャオッス」

「脱獄した・・・と言ったら?」

「もう一度監獄に入れてやる!!果てろ!!」

獄寺とかいう奴の投げたダイナマイトは爆発する前に千草とかいう奴のヨーヨーによって導火線を切られる。

「邪魔すんなメガネ野郎!!」

「・・・メンドイ」

「ひゃ〜、殺気が物凄いれすね」

「アニマル野郎までやりがんのか!!」

「本当にどうなってるわけ〜?」

「骸が霧のリングの守護者だぞ。つまり、ボンゴレファミリーだ」

沢田の疑問に答えた赤ん坊の言葉を聞いて、僕は納得する。

あの時奴が言ったのはこういう意味だったのかと。

だけど、僕には立場なんて関係ない。

「何だよソレ〜!!必死に戦った俺の立場はどうなるんだよ!?」

「スピ〜」

「寝るなぁ!!」

「邪魔だよ」

ガッ

「うわぁっ!!」

ドサッ

邪魔な沢田をどかして、僕は奴に向かって歩く。

「10代目!!」

「ツナ!?」

「いてて・・・」

「ご無事でしたか・・・ヒバリ!!10代目に何しやがる!!」

「・・・」

「無視するんじゃねぇよ!!」

僕は外野の声なんて無視して、奴の・・・六道骸の前に立つ。

チャキッ

「六道骸・・・やっと元の姿に戻ったんだね」

「こんばんは、雲雀恭弥。挨拶は久しぶりですか?それとも数日ぶりですか?」

「どっちでもいいよ。咬み殺す」

棘付きのトンファーを構えた僕を見ながら奴はまた笑う。

「気が早いですね」

奴が・・・六道骸がクフクフと笑う度に苛立ちが増す。

「僕はずっとこの日を待ってたんだよ。借りを返すこの日をね」

「それは恐いですね」

「…」

「…」

一瞬で僕と奴は距離をとる。

「行くよ」

「クフフフ、どこからでも」

僕は奴目掛けて走り出した。


2006,10,6