白い。
見渡す限りが白の世界。
反射する光が眼に痛くて、僕は目を開けていられない。
「ぁ…」
声を出して何かを叫びたかったのに、出てくる言葉は無くて、呼ぶ名前も無い。
「…」
右目が痛い。
抉られているような痛みは徐々に思考力を奪っていく。
「…」
何かしようと思ったはずだったのに、誰か会いたい人がいたはずなのに…。
徐々に何かが僕を壊していく。
それでも僕は何もする気が起きない。
「…」
呼ぶ名前が思い出せない。
痛い。
ただ右眼が…痛い。
白の世界、黒の世界
『六道骸、六道骸』
「誰…ですか?」
どのくらいこの場所にいたのかわからない。
けれど、ここはただ白いだけで、誰かの声など聞いたことは無かった。
『六道骸、六道骸』
「誰なんです?」
誰かなんてわからない。
でも、声の主は確かに僕の名前を呼んでいる。
『六道骸、六道骸』
「だから、誰なんです!?」
相手は僕を知っているのかもしれないが、僕は知らない。
『六道骸、君のいるべき場所はそこじゃない。戻ってきなよ』
「僕のいるべき場所…」
『そう。だから、早く』
声に促され、僕は歩き出した。
でも、どこに行けば良いのかわからない。
白の世界から抜け出せない。
「はぁ…はぁ…」
『早く来なよ、六道骸』
「…」
誰だかわからないが、人を見下す男だ。
だが、声の主はそうであって当然という気がするから不思議だ。
「君は…誰ですか?」
『さぁ、誰だろう』
少し笑みを含んでいるとわかる声で答えられる。
「…ここから出たら教えてもらいますよ」
『その必要は無いよ』
「何故?」
『ここから出れば君は自然に思い出す。ここは君の魂の牢獄だからね』
「魂の牢獄…」
恐ろしい言葉だ。
『出口の鍵は君自身。君が呪縛を解くんだ』
ズキンッ
呪縛、魂の牢獄、鍵
「っ…」
右目が痛む。
さっきまでとは違う痛み。
脳に情報を叩き込まれたかのように映像が流れ込んでくる。
長い槍を持つ少女、ニット帽を被った少年、逆立った髪の少年、額に炎を灯した少年、そして…月光が似合う漆黒の少年。
「僕はっ…」
そう、僕は負けた。
だから捕らえられた。
『思い出したかい?なら、僕はもう帰るよ』
「待ってください!君は…」
『六道骸、現で待ってるよ』
「君はっ…」
『君を咬み殺すのは僕だ』
「雲雀恭弥っ!」
叫んだと同時に、僕の右目に今までに感じたことのない激痛が走り、僕は意識を失った。
パキィンッ
砕けたリングを気にすることなく、雲雀は眼前にある巨大な装置を見つめ、言う。
「さぁ、早く起きなよ。僕がわざわざ君の手助けをしたんだから」
「…」
ゆっくりと骸が左目を開け、雲雀を見る。
それを確認すると、雲雀は雲の炎を灯したトンファーで装置を壊した。
大量の水と共に骸がベチャリと床に倒れ、雲雀がそれを見下ろす。
「もう少し優しくしてくれませんか?僕は十数年閉じ込められてたんですよ?」
「そんなの知らない」
「相変わらずですね…」
「わかってるよね」
「わかってますよ。君には借りがありますから。ですが、先ずは何か食べたいですね。ご一緒していただけますか、
ボンゴレ最強の守護者殿?」
「その呼び名、嫌いなんだけど」
「知ってます」
「相変わらず性格悪いよね」
「クフフ。こればっかりはどうにもなりませんね」
「良いよ。付き合ってあげる。勿論君の奢りなんだよね?」
「勿論ですよ。その後は…十数年間出来なかったことをしましょうね」
雲雀君の耳元で囁くように僕は言った。
09.06.09
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