「…さん…ジャ…さん…ジャンさん」

「ん…ジュリオ…?」

「起きてください。でないと集会が…」

「ん〜もうそんな時間?」

「まだ平気ですが、支度、しないと」

「ぁ〜…わかった。起きるわ」

「はい」ジュリオが寝室から出て行った後に俺は暖かい布団から極寒の現実へ出た。

世間ではもう直ぐバレンタインだと浮かれているせっかくの日曜日だというのに俺はチームの集会だ。

チームCR:5。

何の因果か俺はそのチームのリーダーをやってる。

リーダーとかボスとかカポとか呼ばれるのは確かに気分がいいが、俺には向いてない。

「え〜っと、明日がバレンタインだから…やべぇ。明後日ジュリオの誕生日じゃねぇか」

眠い目で見たカレンダーの日付は13日で、俺の恋人であり、学友であり、チームCR:5のソルダートでもあるジュリオの誕生日を色々あってすっかり忘れていたことに気付く。

「どうすんだよ…」

「ジャンさん、支度できましたか?」

「ぇ、あ、もう直ぐ終わる!」

とりあえず今は集会の準備だ。俺は気持ちを切り替えてシャツに手をかけた。


Buon Compleanno Giulio R2


「疲れましたか?」

「いや、ちょっとした考え事中〜」

「そうですか」

CR:5の集会はそれなりに疲れたが、俺が悩んでるのはジュリオの誕生日をどうするか、だ。

後2日でどうにかなるとも思えねぇし、大体、ジュリオに欲しい物とかあんのか?

「ジャン、さん?」

「お前さ、何か欲しいもんあんの?」

「欲しい物…ですか?」

「ああ」

「…」

「思い付かないのけ?」

「すみません」

「いや、別にいいんだけどさ」

ジュリオはボンドーネ家の一人息子で、御曹司だ。

そんなジュリオが何で俺なんかとこんなボロアパートで暮らしてるのかは常々疑問だが、それはこの際問題じゃねぇ。

問題はジュリオの誕生日だ。

去年の俺の誕生日には時計を貰った。

『カポなんですし』

とか言って。

う〜ん…どうすっかなぁ。

結局ジュリオの誕生日をどうするか決めないまま当日になってしまった…。

どうすんだよ俺〜!

一応バイトの金をちまちま貯めてはいたので可愛い可愛いラーヌちゃんの貯金箱を開けてみた。

中身は1円玉ばっかで1357円。俺が1円玉数えた時間を返せと思わず言ってしまいそうだった。

いや、マジで。

1357円じゃ上等なタバコ1本すら買えるかあやしい。

ジュリオはタバコ吸わないけど。

一番簡単なのはリボンをかけて、誕生日プレゼントは俺〜!ってやつだ。

正直、考えなかったといったら嘘になる。

だけど明らかにドン引きだ。

想像しただけで俺がドン引きなんだから、どう考えてもジュリオもドン引きだ。

ってか、そんな事マジでする奴とかいんのかね〜。

っていうかもう時間殆どねぇじゃん!

「ジャンさん、そろそろ寝ますか?」

「…」

「ジャンさん?」

「ジュリオ、そこ座れ」

「はい」

俺がそう言うとジュリオは素早くコタツから出て、俺の声に従って座った。

俺の目の前に正座で。

「ジュリオ、俺はお前に謝んねぇといけないことがある」

「はい」

「誕生日プレゼントが用意できなかった」

「はぃ…ぇ?」

「だからぁ、誕生日プレゼントが用意できなかったんだって!」

「誕生日…誰のですか?」

「へ?だって今日はお前の誕生日だろ?」

「今日…あぁ、そうですね」

カレンダーを見てジュリオはやっと思い出したみたいだった。

「忘れてたのけ?」

「はい」

「…」

「ジャン、さん?」

「お前、俺の誕生日は覚えてんのに自分の誕生日は覚えてねぇの?」

「俺の誕生日なんてどうでも…いいんです。ジャン、さんの誕生日は大切ですけど」

「…」

ジュリオは自分に執着しねぇ。

俺には執着するくせに。

「ジャンさん?」

「お前はもっと自分を大切にする事を覚えるとして、プレゼント、何がいい?」

「ぇ…?」

「この間聞いただろ?なのにお前欲しい物ねぇって言ったじゃん?」

「はい…特には」

「だけどさ、それじゃ俺が困んの。誕生日にこんな高級そうな時計貰っといて、お前の誕生日プレゼントは無しな〜って気分悪ぃじゃん」

「俺は構いませんが、ジャンさんが困るのは…なら、どうすれば?」

ジュリオはオロオロしながら俺に聞いてくる。

可愛いなぁ。

「考えても思い付かねぇし、仕方ねぇからジュリオが欲しいもんをやることにした。何が欲しい?」

「俺の、欲しい物…」

「金はあんまかかんねぇといいな〜」

一応CR:5の財政担当であり、俺の昔からの友人でもあるベルナルドに金を借りては来たが…なるべくなら安くすませたい。

「欲しい物…」

「何かねぇの?」

「何でも、いい…ですか?」

「俺が出来る範囲ならな」

「な、ら…証が欲しい…です」

「証?」

「俺がジャンさんのモノだって証が…欲しい」

「普通こういう場合逆じゃねぇ?」

「ジャンさんが俺のモノなんて、恐れ多い…です」

「そういうもんかねぇ?まぁいいぜ。どうして欲しいんだ?」

「ま…」

「ぇ?」

「頭、撫でて…抱きしめて欲しい…です。ジャンさんの心臓の音…聞きたい」

言われたのは今時ガキでも言わねぇんじゃねぇの?って思う答え。

俺としてはもっとあげてもいいんだけどなぁ。

「…そんだけ?」

「ぅ…」

「言えよ、ジュリオ」

「ジャンさんがっ…欲しいですっ!」

ジュリオの望みに俺は笑いながら頷いた。

「結局コレになっちまったな〜」

「すみません」

「何でもいいっていったのは俺だから気にすんなって。でもこれなら最初の案でよかったのかもな」

「何です?」

「ん〜ドン引きされそうなんだけどさ、自分にリボンかけて、プレゼントは俺〜ってやつ」

「…」

「ジュリオ?引いたか?」

「ジャンさん…」

「ん?」

「それ、して欲しいです」

「ぇ?」

「その、プレゼントはジャンさんってやつ…」

「そう…いうのが好き、なのか?」

「ジャンさんなら」

「…来年な」

「はい。楽しみにして、ます」

「ぁ、うん。とりあえず今はこっち。だろ?」

「はい」

今年の誕生日プレゼントになった俺を指差せば、ジュリオは笑って俺を受け取ってくれた。




2010.02.23