「美味いか?」

「はい…美味しいです」

「なら良かった」

豪華な調度品が置かれた部屋でジュリオは嬉しそうにジャンから与えられるチョコを頬張っていた。


Buon Compleanno Giulio


『ハッピーバレンタイン!』

『ぇ?』

『今日はバレンタインだろ?俺達一応カトリック信者としてはあんましよくねぇかもしれねぇけど。ま、司教が死んだ日とか関係無く、 俺からお前にプレゼント〜』

『ぁ…ありがとうございます』

『勿論手作りだぜ?』

そんな暇は無いはずだとほぼ常にジャンに影のように寄り添っているジュリオは知っている。

にもかかわらず、手作りチョコを渡して貰えたという事実にジュリオは感激する。

『ジャンさんの手作り…』

『そっ。まぁ、自信はねぇんだけどネ』

『そんなこと無い、です。ジャンさんは料理上手です。俺なんか…』

『あ〜誰にでも苦手なもんくらいあるだろ』

しゅんとしてしまったジュリオにジャンは苦笑する。

脳裏ではいつぞやの缶詰を思い出していた。

『…』

『いいんだよ、お前は』

『でも…』

『お前が料理上手だったら俺が作ってやることとか無くなるし』

『それは…嫌です』

『ならいいんじゃねぇの?』

『そう…ですね』

『だろ?だからいいんだよ』


「ジャン、さん…もっと…」

「ほいよ」

「ん…おいしい…です…」

「そりゃぁよかった」

「はい…」

「…」

「どう、しました?」

「何でもねぇよ。ほら、次」

ジャンは暫くの間動きを止めたが、何事も無かったように再度ジュリオの口にチョコを放り込む。

「ん…これも美味しい、です」

「本当、お前ってよく食うよな」

「すみません…」

「別に怒ってねぇよ。作るほうとしては嬉しいし」

「よかった…」

「…」

「ジャン、さん?さっきからどうしたんですか?」

何か気になることがあるのか、ジャンはどうも落ち着かない。

ジュリオはそんなジャンの様子が気になって仕方が無く、戸惑いがちにジャンを見つめる。

「ん〜…」

「ジャンさん?」

「ジュリオ」

ぐいっ

「ジャンさ…んっ!」

唐突にされたジャンからのキスにジュリオは驚くが、それも一瞬のことで、次第にジャンとのキスで主導権を握っていく。

「んっ…ふっ…」

「っ…はっ…ん…」

「ぅんっ…ふぁ…」

「っ…ジャン、さん…なんで…」

ジャンの呼吸が限界であるのを感じ、ジュリオはゆっくりと離れると、滅多に自分からキスをしようとしないジャンが起こした 行動を不思議に思い、尋ねてみる。

そんなジュリオに、ジャンはニッと笑った。

「Buon Compleanno Giulio!」

「…ぇ?」

唐突に言われた言葉を脳が処理できず、ジュリオはジャンを凝視する。

「やっぱりわかってなかったな。今日は2月15日。お前の誕生日だろ」

「ぁ…」

言われて初めてそうだったかもしれないとジュリオは考える。

ジャンの事となれば決して忘れたりなどはしないのだが、幼少期から誕生日を楽しいと思ったことが無いジュリオにとっては 自身の誕生日の印象が薄いのは仕方のない事なのかもしれない。

名家、ボンドーネ家に生まれたジュリオに与えられたのは重圧。

誕生日にはボンドーネ家との繋がりを求めようとする者や、その名のおこぼれにあずかろうと集る人間に祝われたとしても、 嬉しくなどない。

そんな誕生日を過ごしてきたジュリオにとって、純粋なお祝いとして祝ってもらえることは嬉しくもあり、少々気恥ずかしくも あった。

「俺とのキスで24歳Good bye!25歳Wel come!な気分はどうよ?」

ジュリオの頬に手を当て、視線を絡めながらジャンはジュリオに尋ねる。

「最高、です」

はにかみながら笑うジュリオにジャンは満足そうに笑う。

「…ぁ」

「どう、しました?」

ジャンの声にジュリオは何か間違えたのかと心配になるが、ジャンの言葉は予想外のものだった。

「プレゼント用意するの忘れた」

「…」

「プレゼント、何がいい?お前に選ばせてやるよ」

いつもの余裕のある、ジュリオの好きな笑み。

その笑みにつられてジュリオも笑う。

「…嘘つきですね、ジャンさんは」

「ん〜何のことかなぁ?」

あくまでしらをきるつもりらしいジャンに、ジュリオは少し戸惑いがちに言った。

「俺は、ジャンさんが欲しいです」

「ん、やるよ。お前の好きなだけ」

発せられた言葉に満足げに笑い、ジャンはジュリオの首に腕を巻きつけた。



10.02.14