パシャパシャ
「冷たい。でも凄く良い気持ち」
蛍
声の主のかごめは川に足を半分程つけて水を軽く蹴っている。
「本当に良い気持ちだね、かごめちゃん」
とかごめに答えるように同じ事をかごめの隣でしていた珊瑚が言う。
「そうだね。こんな風に川に足をつけていられるのっていうのは戦国時代の特権だよね」
と笑いながら言うかごめに対して
「特権?何で?」
と珊瑚は不思議そうに尋ねる。
「私が住んでいる所は川にゴミが捨ててあったりして濁ってて、足なんてつけられないからかな」
「かごめちゃんの国って大変なんだね」
「大変じゃないけど、自然は少ないね」
「そうなんだ」
そうなんだよとかごめと珊瑚が話していると
「かごめ−!珊瑚−!」
という七宝の声がした。
「どうした、七宝」
「何?七宝ちゃん」
とかごめと珊瑚が走ってきた七宝に尋ねる。
「今日はこの近くの村で世話になるのか?」
と言いながら七宝は、すぐ側に見える村を指差した。
「…まだお昼近くだからもう少し進むかもしれないわね」
というかごめに対して
「い、嫌じゃ!」
と七宝が反対する。
「七宝ちゃん?」
「七宝?」
「嫌じゃ。オラは今日はここにいたいんじゃ!」
「なら勝手に残ればいいだろ?」
不意に七宝に影が落ちたと思うと、直ぐ側に犬夜叉が立っていた。
「犬夜叉。いつから話聞いてたの?」
「ちょっと前からだぜ。おい、七宝。俺達は暇じゃねえんだ。早く奈落から四魂の玉を奪わねえといけねえんだよ」
「わかっとるわい!」
半分やけになっている七宝に弥勒が
「なら聞き分けなさい、七宝」
と少し呆れた声で言う。
「嫌じゃ!」
「何だと?」
力強く反抗をした七宝だったが、犬夜叉の声で怯む。
「い・・・・嫌だと言ったんじゃ」
「てめえ、いい度胸だな」
「き…今日位のんびりしても罰はあたらんぞ!」
「だから、先を急ぐって言ってんだろ?」
「それに、最後のカケラはかごめが持っとるし…」
と半分すがるような眼でかごめを見ながら七宝が言う。
「それはそうよね。奈落が四魂の玉を完成させるには私の持っている四魂のカケラを奪いに来るはずよね」
と七宝の訴えを理解しているのかしていないのかは分からないが、かごめがそう答える。
「んな事は分かってる。オレが言いたいのはそんな事じゃねえ!!」
「まあまあ、犬夜叉落ち着いて。七宝ちゃん、どうしてここにいたいの?」
とかごめが聞くと
「見せたいものがあるんじゃ」
と七宝が力強く答える。
「だったら今見せれば良いじゃねえか」
「夜にならんと無理なんじゃ!」
「そんなに重要なものなのですか?」
「…そうじゃ」
「…犬夜叉」
「何でい」
「七宝ちゃんがここまで言ってるんだから、今日はあの村に泊まらない?」
「そうだね。七宝の言う事もあながち間違ってないし」
「そうですな。七宝がここまで言うのですから」
かごめ、珊瑚、弥勒にそこまで言われて犬夜叉は不満げに
「…ケッ、勝手にしやがれ」
と言うとどこかに行ってしまった。
ユサユサ
「かごめ、かごめ」
夜中にかごめは七宝の声で目が覚めた。
眠い眼を擦りながら
「ん…何、七宝ちゃん。こんな夜中に」
と七宝に聞く。
「黙ってオラについて来てくれ」
なんていきなり言われたのでかごめは時計で時間を確認しながら
「何で?」
と七宝に聞いた。
しかし、七宝はかごめの質問には答えずに
「頼む」
と言う。
「…分かったわ」
と言うとかごめは布団からこっそりと起き出した。
かごめと七宝が少し歩いた所で
「七宝」
という聞きなれた声がした。
「珊瑚ちゃん!」
とかごめが声の主に聞くと
「かごめちゃん!?どういう事だ、七宝」
と言いながら珊瑚が暗闇から姿を現した。
「かごめにも見せたいんじゃ」
「かごめちゃんにも?」
「そうじゃ」
「ふ−ん。七宝がそう言うならいいんじゃない」
「じゃあ早速出発じゃ!!」
七宝と珊瑚が何を話していたのか不思議に思ったかごめは七宝の後に続いて歩く珊瑚に
「ねえ、珊瑚ちゃん、さっき七宝ちゃんが言ってた見せたい物って何?」
と聞いた。
すると
「さあ?私も分からないんだ」
という意外な答えが帰って来た。
「?」
「七宝に『夜になったら見せたいものがあるからついて来てくれ』って言われたから私はここにいるんだけど」
「そうなんだ」
とかごめが納得していると、
「かごめ、珊瑚」
と七宝が2人を呼ぶ。
「何だい、七宝」
「ここじゃ」
と言った七宝の指差す先には小川がある程度だった。
「ここ?何も無いみたいだけど?」
「近づいて川を良く見てくれ」
という七宝の言葉通りに2人は川に近づく。
「…ん?」
「これ、もしかして蛍!?」
「そうじゃ。昼間オラが見つけたんじゃ」
と驚くかごめに対して七宝が誇らしげに言う。
「凄いわ、七宝ちゃん」
「オラにかかればこの位簡単じゃ」
「なるほど、蛍か。確かに夜じゃなきゃ意味は無いね。それにしても、もうそんな季節なのか」
「早いよね」
「そうだね」
かごめと珊瑚と七宝が蛍を見ながら話をしていると不意に
「ケッ、蛍ごときで俺達は足止めされたのかよ」
と言う声が聞こえた。
「「「い、犬夜叉!?」」」
と驚く3人に構わずに
「蛍なんか毎年見れるじゃねえか」
と言う犬夜叉に対して
「コラコラ犬夜叉。何もそんな言い方しなくても良いでしょう。それにこの光景は素晴らしいものですしね」
と弥勒が言う。
その言葉で驚きが冷めたのか、七宝が
「流石弥勒じゃ!それに引き換え犬夜叉ときたら…」
この景色がわからんとはと言おうとした七宝の言葉はそこで止まった。
「何だよ、何か文句あるのか?」
と何故か怒っているような犬夜叉に対して
「ふ…ふん…」
と七宝は強がって見せるが、犬夜叉は気にする事も無く、七宝を捕まる。
その時
「好い加減にしたらどうですか、犬夜叉」
という弥勒の声に対して
「ケッ」
と言いながら犬夜叉はその手を離した。
「そういえば犬夜叉も弥勒様もどうしてここにいるの?」
と不思議に思ったかごめが聞くと
「さっき七宝がこっそりと出ていくのを見掛けましてね、後をつけたらかごめ様と珊瑚と共に出掛けたんで、
犬夜叉を起こして2人で後をつけて来たってわけです」
と弥勒が答える。
「全然気付かなかった」
と言う珊瑚に対して
「ま、当然ですね」
と弥勒が答える。
「何が当然なのさ」
と少しムッとしながら珊瑚が聞くと
「当然は当然ですよ」
と弥勒が意味深に答える。
「…何かムカつく」
「犬夜叉、後でちゃんと七宝ちゃんに謝ってよ」
「何で俺が」
「そう。おすわ…」
かごめがおすわりと言いかけると犬夜叉は慌てて
「わわわわわ、分かった」
と返事をした。
「良かった」
「ちっ…」
「…」
「かごめ」
「何?」
「かごめの国じゃ蛍は見られねえのか?」
といきなり犬夜叉に面白い質問をされながらかごめは
「全く見られない事はないけど、自然の蛍はほとんどいないわね」
と苦笑しながら答える。
「そうか…」
と少し困った表情をしている犬夜叉の隣で
「だからこうして蛍を見られて嬉しい」
とかごめが言う。
「…良かったな」
という犬夜叉に対して
「…ねえ、犬夜叉。犬夜叉も本当はこんなに沢山の蛍を見られて本当は嬉しいんじゃないの?」
とかごめが聞く。
「誰が」
「犬夜叉ってば素直じゃないんだから」
「ケッ…」
蛍を眺めながら弥勒は
「珊瑚、綺麗ですね」
と言う。
「そうだね、本当に綺麗…」
と蛍を見ながら言う珊瑚に
「珊瑚の方が綺麗ですよ」
と弥勒が言う。
顔を真っ赤にしながら
「な、何言ってるのさ、法師様!」
と珊瑚が言うが
「本当ですよ」
と弥勒が答える。
「法師様…」
「珊瑚…」
「法師様…って、この手は何?」
珊瑚は自分の尻に回された弥勒の手を見ながら言う。
「手?…手なんて気にしてはいけませんよ、珊瑚」
と笑いながら言う弥勒に
「…法師様のバカ!!」
バチ−ン
と珊瑚の平手が飛んだ。
「弥勒も犬夜叉もアホじゃな。そう思わんか、雲母」
「ミ〜」
「やっぱり雲母もそう思うのか」
「ミ〜」
「オラが…いや、オラ達がしっかりせねば。のう、雲母」
「ミ〜」
2004,7,31
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