その少年はたまにふらりとやって来てはヒラメのえんがわを好んで食べていった。
その年頃の少年にしては中々渋いと思ったし、纏う雰囲気が独特で、その年代の少年に似つかわしくないのものだったのもあり、直ぐに覚えてしまった。
その少年の名前が【ひばり】だと最近知った。
数ヶ月前から少年が連れている鳥がそう呼んでいたからだ。
頭から爪先までほぼ黒一色の少年がひばりとは…似てると言うべきか、似てないと言うべきか…。
少年について知っているのはそれだけ。
少年…ひばりは注文と会計など以外は殆ど口をきかなかったし、聞かれることを好まない雰囲気を纏っていた。
だから無理に聞こうと思わなかった。
まだ親の庇護下にいるはずの年代の少年が、保護者やそれに類するような人物と共にきた事が無いのだって理由があるに違いなかったから。
4/24 山本武と山本剛
彼がこの店の馴染み客になってもう随分と経つ。
今日もふらりとやって来た彼は、注文以外は特に何も言うことなく、ただ淡々と食べていく。
彼の連れている鳥はたまに何か言っているが、彼は特に反応していなかった。
ガラガラ
「ただいま〜ぁ、お客さ…ヒバリ?」
「山本武…何で君がここにいるのさ?」
「ココ、俺ん家だぜ」
「…」
彼の纏う空気が少しだけ変わったのにも武は気付かずに喋る。
「でも意外だな。ヒバリってあんまし外食するようには見えないからさ」
「…」
「ヒバリってよくうちに来るのか?」
「なぁヒバリ、どうなんだよ?」
「黙りなよ」
「ははっ相変わらずだな」
「…ここに置くから」
武に耐えられなくなったらしい少年が万札を置いて立ち上がる。
「待てよ、ヒバリ。うちの店の寿司は美味いだろ?もっと食ってけよ」
「…」
「なぁ、親父?」
「武の友達なら金は取れないしな」
「友達?勘違いしないで。僕は山本武と友達なんかじゃない」
「そう言うなって。ほら、ヒバリ」
羽織っていた学ランの内側から瞬時に武器と思われる何かを取り出した少年は、取り出した際の反動を利用してそのまま振り上げようとした。
でもそれは武の手によって止められる。
「…」
「カリカリするなって。それに店の中でトンファー振り回したら危ないだろ?」
少年はトンファーを再度振るおうとするが、武に抑えられていて出来ない。
それに更に苛立ったらしい少年はそのままの状態で鉤を出す。
それに驚いた武が手を離すと、直ぐに少年はトンファーを構え直した。
「落ち着け、ヒバリ」
「うるさいよ。散々僕を怒らせておいて今更何を言ってるの?」
「俺は店の中で暴れてほしくないだけだって」
「うるさい。咬み殺す」
「はぁ…仕方ねぇな。外でなら相手するからさ、店の中では止めようぜ」
「…いいよ」
武の提案に何かを考えたらしい後、少年は了承すると店の外へと出て行った。
「木刀なんかで僕と殺るつもり?」
「まぁな。俺と雲雀が戦うのに真剣はいらねぇだろ?」
ムッ
「もういい。咬み殺す」
そう言うと雲雀は山本に向かって行く。
繰り出される素早い攻撃を木刀で防ぎながら、山本は雲雀の隙を狙う。
しかし、雲雀に簡単に隙が出来るはずもなく攻防戦が続く。
雲雀が優位でありながら山本がギリギリの所で攻撃を避けるために決定打は生まれなかったが、山本が木刀を持ち変える為に手を離した一瞬の内に雲雀が木刀を弾き飛ばす。
「あ」
「さぁ、君の負けだよ。覚悟は…」
「覚悟するのはあんたの方じゃねぇか?」
「何?」
声のした方を振り向けば、そこにいたのは明らかな不良達だった。
「あんたのせいで木刀が当たったんだよ、木刀が!」
「…」
「無視とはいい度胸じゃねぇか」
「そのくらいで止めとけ。雲雀をこれ以上怒らせたら…」
「何だよ?」
「カミコロス、カミコロス」
「ぁ?噛み…」
雲雀の愛鳥の声に不良達が反応した時には既に雲雀の攻撃が命中していて、雲雀によって宙を舞った不良に他の不良達が驚いている間に雲雀は次々とトンファーを振るっていき、
愛鳥も予想以上に鋭い嘴と爪で不良達に傷を負わせていく。
「なんっ…」
「君で最後だね」
「まっ…」
「待たない」
最後の1人を咬み殺すと、雲雀は山本へと向き直る。
「…」
「…山本武」
「何だ?」
「君との勝負は預けておくよ」
「それでいいのか?」
「興が削がれたしね。それに、今日も並盛の平和は守られた」
2012.04.30
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