「う゛ぉぉい!!いい加減離しやがれ跳ね馬ぁ!」

「だから、少しは静かにしろって」

「うるせぇ!無理矢理リング戦の会場に引っ張って来やがって、なんのつもりだぁ!」

大声を張り上げるスクアーロをずるずると引っ張りながら、ディーノは並中の校舎を進んでいた。


2/4 ディーノとスクアーロ


「会わせたい奴がいるんだよ。俺が世界で一番大切な奴だ。ぁ、惚れるなよ」

惚気ともとれる発言をしながらディーノは進んでいく。

「誰が惚れるかぁ!そんな用なら俺は帰る!!」

スクアーロはとても大切な用事だと言われたからわざわざ時間を作り、ディーノと共に並盛までやって来たのだ。

その理由が『世界で一番大切な奴に合わせる為』だったのだ。

スクアーロがキレるのも無理は無い。

「待てって。絶対気に入るから。でも、惚れるなよ」

「馬鹿が!」

何度も釘を刺すディーノに呆れや苛立ちという様々な感情をを含んだ声で返す。

「な…どこがだよ!」

「てめぇの恋人になんか俺は興味ねぇんだよ!!」

「だから静かに…」

声を抑えることをしないスクアーロにいい加減にしろと言おうとしたディーノは不意に聞こえた声に動きを止めた。

「へぇ、あなたって恋人いたの」

「恭弥!」

現れた雲雀にディーノは喜ぶが、反対にスクアーロは不快感を示す。

「沢田綱吉の雲の守護者、何でてめぇがここにいやがる」

「僕は並盛の秩序だからね。それに、並中は僕のものだよ。それと、沢田綱吉の事は訂正してもらおうか」

雲雀の登場に一瞬固まったディーノだったが、直ぐに復活してくる。

そうして何事も無かったように雲雀の傍に立つ。

「紹介するな、スクアーロ。こいつは雲雀恭弥。俺が世界で一番大切な奴な…」

ガッ

「ぐっ…」

「う゛ぉぉぉぉい…」

ディーノの言葉が終わる前に雲雀がトンファーでディーノを殴る。

その行動に流石のスクアーロも驚く。

「何言ってるの?ふざけたことばかり言ってると、咬み殺すよ?」

「跳ね馬ぁ…冗談だろ?」

「いや、本気だ」

ガッ

素早い動きで復活してきっぱりと答えたディーノを雲雀はトンファーで再度殴る。

「ふざけるな」

「き…恭弥…」

「う゛ぉぉぃ…そのくらいで止めてやれぇ」

流石にいたたまれなくなったスクアーロが声をかけるが、雲雀がスクアーロの方を向く気配は無い。

「…校内は関係者以外立ち入り禁止だよ」

「そっちか!てめぇ、俺を覚えてねぇのか!?」

「…」

誰だっけ?とでも言いたげにやっとスクアーロを見た雲雀に、ディーノも苦労しているんだなぁなどとスクアーロが心の中で涙を流す。

「ガラス、ガラス!」

「ぁあ?」

「あぁ…」

スクアーロがディーノの苦労を察していると、いつの間にか現れた鳥が雲雀の肩にとまり、ガラスとくり返す。

スクアーロには意味がわからなかったが、雲雀は思い当たることがあったらしく、納得すると同時に、スクアーロに襲いかかる。

「いきなり何だぁ?」

「あなたは並中の窓ガラスを割った人だったね」

「そんな覚え方かぁ!!」

「それで十分だよ」

雲雀のトンファーを仕込み剣で受け止めながら、雲雀とスクアーロは会話を続ける。

その間にもお互いの攻撃の手が止まることは無い。

「それでもてめぇは本当に跳ね馬の惚れた相手かぁ?」

「さぁ、興味ないよ。僕が今興味があるのは…あなただ」

雲雀がその言葉を言った直後、倒れていたディーノが物凄い勢いで身体を起こす。

「恭弥っ!!」

「う゛ぉっ」

物凄い勢いで飛び起きたディーノにスクアーロは驚きの声をあげるが、雲雀は慣れているかのように全く動じない。

「あぁ、まだ生きてたの?」

「当たり前だ。それより恭弥、スクアーロに興味あるって何だ!?恭弥は俺のこと嫌いになったのか!?」

「僕は元々あなたの事なんて好きじゃないよ」

「恭弥っ!」

「煩い」

トンファーを直撃させ、ディーノが再度倒れたのを確認すると雲雀はスクアーロに向き直る。

「う゛ぉぉぃ…なかなか過激だなぁ」

スクアーロは目の前で繰り広げられる過激な光景をただただ眺めていることしか出来なかった。

しかし、その光景は自分とザンザスが日常的に繰り広げていることだとスクアーロは気付かない。

「次はあなただね」

「面白ぇ。やってみやがれぇ!」

トンファーと剣がぶつかる音が響く中で雲雀の愛鳥が鳴く。

「ヒバリ、ヒバリ」

「黙ってて」

頭上を旋回する愛鳥に視線を向けることなく雲雀は告げる。

「ペットを気にするなんて余裕だなぁ!」

「余裕だからね」

「その余裕を無くしてやるぜぇ!」

「やってみなよ」

普通ならば狭い廊下で戦う事は難しいにも関わらず、2人は一歩も引く事なく戦う。

そこが地理的に戦闘で向かない場所であろうとも、2人には関係無いし、問題になどならない。

そんな中、ディーノが意識を取り戻す。

「いてぇ…恭弥の奴、思いっきり殴りやがって…って、なぁっ!」

殴られた場所を抑えながら起き上がったディーノは、目の前のスクアーロと雲雀の戦いに驚いた。

「とれぇぞ、跳ね馬ぁ」

「永久に寝てなよ」

「なっ…何で戦ってんだよ!?」

自分に向けられた酷い言葉など意に介さず、ディーノはスクアーロと雲雀が信じられないというように叫ぶように尋ねる。

「不法侵入したからだよ」

「ふっかけてきたのはアイツだぁ」

「止めろって、2人共!!同じボンゴレの仲間だろ?」

「ふざけた事言うな!!」

「僕も同意見だね」

この説得の言葉は失敗だったと思いながら、ディーノはとにかく2人を止めようとする。

「とにかく止めろって!」

「煩い。咬み殺す」

ディーノの想いとは裏腹に、スクアーロと雲雀は戦いを止めなかった。


「ヒバリ、ヒバリ」

「…」

「ヒバリ?」

「黙って」

「ピィ」

「…ムカつく」

雲雀とスクアーロの戦いは結局勝敗が決まらずに終了した。

ディーノが繰り返す言動に戦意がそがれてしまったのだ。

そんな事をしたディーノは思いっきり咬み殺しておいたが。

「余計な事ばかりしてくれるよ」

それでも邪魔をされたという雲雀の苛立ちはそう簡単に収まってなどくれない。

「ピィ」

「何?」

「ヒバリ、マモッタ」

「そうだね」

愛鳥の言わんとすることを理解し、雲雀は薄く笑う。

雲雀自身、スクアーロが実力者であることなど十二分に理解している。

前回はリング争奪戦(主にチェルベッロ)によって学校が破壊されてしまったが、今回は校舎が無傷のまま、スクアーロを排除することに成功したのだ。

「今日も並盛の平和は守られた」

学校の屋上で夕陽に染まる並盛町を見下ろしながら、雲雀は呟いた。



2011.02.13