「今年も沢山貰ったんだ、アキラ」
机の上にある紙袋の中には色とりどりの物体。
それらは私に贈られた誕生日プレゼントだ。
「好きな物を持って行って良いですよ」
「いらない」
「なら捨てます」
バサッ
ほたるの言葉を聞くと、私は紙袋をそのままゴミ箱に捨てた。
Seekret Progect
「いいの?」
ほたるが不思議そうに聞いてくるが、私は淡々と答える。
「えぇ。貰う理由もありませんしね」
「ふぅん」
「アキラぁ、灯ちゃんお腹空いたぁ」
「残念でしたね、灯。たった今捨てました」
「ちっ、遅かったか」
教室のドアを開け、開口一番に私が貰ったプレゼントの中の食べ物をよこせと暗に言う灯に呆れながら答える。
「人の物をあてにしないでください」
「だって、アキラはいっつも沢山プレゼント貰うじゃない」
「捨てますけどね」
こんなものいらない。
邪魔になるだけだし、必要無い。
「アキラって物欲無いの?」
「貴方に言われたくありませんし、無いわけでもありません」
「じゃぁ何で?」
「欲しくないから…ですかね」
ほたるの言葉に少し考えてみるものの、答えは結局それしか思いつかない。
「難しいわねぇ。ぁ、コレ灯ちゃんからのプレゼント」
「…」
「手」
「…」
「手、出しなさい」
「…」
「手ぇ出せってんだよ!秘密バラすぞ!」
「っ…」
恐怖を感じながら右手を出しだせば、灯は楽しそうに笑う。
「初めからそうすれば良いのよ。はい」
「…何ですか、コレ?」
「暗号よ」
「暗号?」
「ただプレゼントを渡してもつまらないでしょ?だから、暗号を解かないとプレゼントのありかがわからなくしたの」
確かに、渡された紙には何か書いてある。
しかし、普通プレゼントを暗号で示しますか?
「くだらない。私はプレゼントなんて欲しくありません」
「アキラ…あんたの意見なんて聞いてねぇんだよ」
「なっ…」
「明日の朝までにプレゼントが何かわからなかったら…秘密、バラすわよ」
「横暴ですよ!!」
「今バラしても良いのよ。アキラはか…」
「わーっ!!」
灯の言葉を遮り、灯を睨み付ける。
「やる気になったかしら?」
「えぇ、やりますよ」
「頑張ってね〜」
もう、どうにでもなれ。
「はぁ…」
灯の書いたであろう暗号を解きながら進む。
「これは一体何なんですかね?」
灯にとっては複雑かもしれない暗号であっても、それが万人に共通して複雑なわけではない。
「はぁ…」
踊る人形のつもりで書いているのか、それとも単純に太陽暦に当てはめた図形なのか…前者でしょうね。
記号系の暗号には必ず法則が存在する。
法則さえわかれば暗号の解読など難しくない。
「ん?」
暫くすると暗号は解けたものの、妙な違和感が残った。
「灯1人でこの暗号を作れるはずがない」
今の季節の正確な太陽と月と星の関係、規則性、それらをわかっていなければこの暗号は解けないし、作れない。
太陽の動きだけならともかく(それも怪しいですが)灯が月と星を絡めた複雑な暗号など作れるはずがない。
「…」
灯が頼み、このレベルの暗号を作れるであろう人物は真田幸村しか思い付かない。
「幸村さんが…」
灯が頼む相手としては妥当だし、あの2人は意外と仲が良い。
だが、あの人は何を考えているのかよくわからない。
「…」
だからといって、暗号の指示に従うしかない。
もし従わなければ明日どうなっているかなんて恐ろしくて考えたくもない。
「仕方ないですね」
秘密をバラされるよりは悪いようにはならないだろう。多分…。
「やっと来やがったか」
「梵天丸?貴方何してるんですか?」
目的地にいた梵天丸に驚く。
「お前を待ってたに決まってるだろ」
「私を?何でですか?」
「何でって…ここが暗号の指定場所だからに決まってんだろ」
「それはそうですが…あぁ、幸村さんも一枚噛んでるんですね」
「えっ…」
私の言葉に明らかにうろたえる梵天丸を見ないふりをして、私は言葉を続ける。
「あの暗号は灯1人では作れるはずがないですからね」
「…」
「とすると…ほたるもいますね」
「あぁ、当たりだよ」
「では、道案内してください。その係りなんですよね?」
「くそっ。可愛くねぇガキだ。ついて来やがれ」
「流石アキラくんだね。僕の暗号直ぐに解いちゃうんだから」
「やはり幸村さんでしたか」
案内された場所で幸村さんに声をかけられる。
予想的中ですね。
「うん。頼まれたんだよ」
「灯にでしょう?」
「うん!」
「…」
「幸村の暗号は意外と難しくなかったか?」
脱力していると、器用にけん玉をやりながら、サスケ君が聞いてくる。
「えぇ。あれはわからない人にはわからないでしょうね」
「それはあんたがわかる人だって暗に言ってんのか?」
「さぁ、どうですかね?」
「…まぁ、別に構わねぇけどな。せいぜい楽しめよ」
それだけ言うとまた器用にけん玉をやりながらサスケ君が帰っていった。
一体何があるって言うんです?
「アキラ、これつけて」
「目隠し?」
ほたるの差し出した物を怪訝な顔をして見るものの、ほたるは全く動じない。
「早く」
「わかりましたよ」
仕方なく目隠しをすれば、何かが運び込まれる気配がした。
「取って良いよ」
ほたるの声で目隠しを取れば、そこにあったのは大きなショートケーキ。
「アキラさんは苺ミルクのかき氷が好きだって聞いてたから、苺たっぷりのショートケーキにしてみました」
「ゆやさん…」
「わいも手伝ったんやで」
「トラ…」
「及ばずながら私も」
「真尋さん…」
3人で作ってくれたんですか。
大変だったでしょうに。
「で、勿論僕が暗号係。サスケも手伝ってくれたんだよね」
「まぁな」
おそらくサスケ君は幸村さんの監視役だったんでしょうね。
「灯ちゃんは企画、梵は待機、ほたるは…目隠し担当よ」
「灯、ほたるは無理矢理すぎませんか?」
「煩いわね!仕方ないでしょ!細かい事気にするならバラすわよ」
「くっ…狂は?」
「あれ?さっきまでいたのに」
ゆやさんがきょろきょろと辺りを見回し、私も探すが、狂は見当たらない。
「何だ、俺を捜してたのか?」
狂はゆやさんの背後に音もなく現れ、ゆやさんはそれに驚き、声をあげた。
「あんたが勝手にいなくなるからでしょ!それに、気配もなく後に立たないでっていつも言ってるでしょ!」
ゆやさんの怒りにまったく動じずに、狂はニヤニヤ笑っている。
「狂〜。狂がいなくて灯ちゃん寂しかったぁ」
何に対抗してるんだか、灯が狂にくっつくが、狂もいつもの事なので気にしない。
「狂」
「…成長したな、アキラ」
「狂…」
狂の言葉がとても嬉しい。
狂に認めてもらえた。
「だが、俺の次に強い漢になるのはまだかかりそうだな」
「そんなことねぇ!直ぐになってやる!」
狂の言葉に思わず叫び、はっとして狂を見ると、狂はひどく楽しそうに言った。
「楽しみにしてるぜ」
「えぇ」
私はただ大きく頷いた。
「む、無理しなくて良いですからね!」
「大丈夫です…」
「アキラには無理だったんじゃないの?」
「そんなことありません!!」
「なら早く食べちゃいなさいよ」
「っ…」
巨大なケーキは食べても食べても一向になくならない。
流石にかなり気持ち悪いんです。
「アキラさん、本当に無理しないでくださいね」
「…」
ゆやさんの言葉に罪悪感を感じつつも、そろそろ本気で限界だ。
「アキラぁ。あんさんはゆやはんや真尋わわいが心を込めて作ったケーキが食べられへんって言うんか?」
「…うるせぇんだよ、バカトラ」
「何やと?」
「うるせぇってんだよ!!てめぇにだけはゴチャゴチャ言われたくねぇ!」
「なっ…」
苛々を紅虎にぶつける。
「今日こそは許さねぇ」
手近にあった棒を取り、構えた。
「結局こうなっちゃうんですね」
「アキラさんらしいけどね」
「そうですね」
「俺も参加する」
「じゃぁ、俺もだな」
「灯ちゃんも行く〜」
そうして、夜は更けていく。
2009.4.26
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