勝った…。

俺は勝ったんだ。

時人に…太四老の時人に。

「ぐっ…」

分かっていたはずだ。

―――もう二度と戦えないかもしれない―――

認めるのが嫌で…それでもそれが現実で…

「狂…」

本気で死合ってくれると言っていた。

狂の背中を追い掛けて、追い掛けて、やっと手が届くかもしれないと思ったのに…

「うぐっ…」

戦えない。

漢と漢の約束なんだ。

四聖天のアキラとではなく、アキラという俺自身との約束なんだ。

だから…


血を流し過ぎたからだろうか?

視界が霞む。

「だめだ…」

意識を失ったりしてはいけない。

思考を止めてはいけない。

そんな俺の想いとは裏腹に徐々に身体は痛みを感じなくなっていった…。


『アキラ』

「狂!」

『良く頑張ったな』

「…」

『見直しちゃったわよ』

『うん…』

『アキラ、良い戦いだったぜ』

「…」

何だ

『疲れただろう?』

何かが違う

『ゆっくり休んでいいのよ?』

違う

『休みなよ』

違う

『もう動けねえんだろ?』

違う

『アキラ、お前はもう駄目だろう?』

「…っ違う!お前等は俺の知ってる狂達じゃねぇ!」

『なに言ってるのよ、アキラ』

「お前等は違う!本物はそんな事は言わねえ!」

シャッ

抜いた1本の刀はもうボロボロで…

狂達の方を向いたままジリジリと後ずさりする。

『アキラ』

「呼ぶな!!」

『アキラ』

「黙れ!!」

『アキラ』

「うるせえ!!狂の声で呼ぶんじゃねぇ!!」

それだけ叫ぶとそこから逃げるように駆け出した。

『待ちなさい!アキラ!』

灯の声が聞こえた気がしたが、振り返らなかった。

―――アレは狂達じゃない―――

何故そう思ったかなんてわからない。

でも確かに違和感があった。

灯、ほたる、ボン、狂。

休めなんて言うはずがない。

休んだりしない。

休む事などできはしない…。


「はぁ…はぁ…!」

走って逃げたそこにいたのは4年前の私。

『何で…狂…』

「…」

『こんな眼はいらない』

この子は狂が私達四聖天を…私を捨てた後の私だ。

眼から血を流している過去の私。

そうだ…強くなる為に両目の視力を無くしたんだ。

『…に』

「え?」

過去を思い出していた私に4年前の私が声をかけてくる。

『その刀に巻いてあるやつ、何?』

私の刀に巻いてあるもの。

「これですか?前に言いませんでしたか?友情の証らしいですよ」

『ダセぇな』

「ええ。でも…」

今の私には大切な物。

『俺にはわかんねえけど…』

「…」

そう、過去の私にはわからなかった。

でも、今ならわかる。

これは…戦友との絆の証。

『呼んでる』

「?」

『誰かが呼んでる』

「…!」

『?』

「…が…大切な仲間が…戦友が呼んでるんです」

『…』

「今の貴方にはわからないでしょうね。でもいつか…」

必ずわかるようになります。

貴方は私。

「貴方にもわかるようになりますよ」

『ふうん』

「さようなら」

過去の私よ。


今の私の居場所はここではない。

私はひとりじゃないから。

だから帰らなくてはいけない。

今の私の居場所は―――


「アキラ、アキラ」

「アキラ、しっかりしい?」

「…ボン…虎…?無事だったんですね」

「アホ、それはわいらの台詞やないか」

「アキラ…」

「ふっ…やりましたよ、梵天丸。時人に勝ちました」

「ああ、すげえな」

たとえ侍の血を持たずとも…。

もう戦えずとも…



強くなりたかった。

俺が追い掛けていた鬼眼の狂という存在はとてつもなく強くて…俺の周りも強い奴らばかりで…悔しくて…。

強くなりたかった。

憧れの狂に追いつける位に。

この世で二番目に強い漢になる為に。

狂…俺は一瞬でもあんたに追い付く事ができたのか?

この世で二番目に強い漢になれたのか…?


それは最も強い想い


2005,6,26