「おっせぇな」

かごめとの約束場所の神社は秋祭りでごった返していて、色々な人間や妙な食べ物の匂いが入り混じって鼻が利く俺は凄く辛い。

しかもうるせぇし。

「もう帰っちまおうかな」

そんな事をすればかごめは絶対怒るからそんな事はしない・・・というか出来ない。

俺って結構かごめに弱いよな・・・。

そんな事を考えていたらかごめの良い匂いがして、匂いのしたほうを向けばかごめが履きなれていないであろう靴の音を立てながら 俺の方に小走りで近づいてきていた。


そこにある幸せ


「遅ぇ」

「御免ね。凄い人込みなんだもん」

「ったく」

今日のかごめは普段来ている制服とやらではなく私服で、とても似合っていると思った。

そんな事かごめには言わねぇけど。

「犬夜叉?」

「!!」

考えていた事がかごめに気付かれるんじゃないかと俺はかごめから視線を逸らしてしまった。

これじゃぁ何か後ろめたい事があるみてぇじゃねぇか!!

いや、そんな事は無い。

「怒ってる?」

「別に」

「よかった。じゃぁ行こう」

俺の着物をかごめが少し引っ張った。

普段そういうことをしないから妙にドキドキしてしまう。

「あぁ」

俺はそれを隠すようにぶっきらぼうに答えた。

それでもかごめは楽しそうに笑っていた。


かごめと並んで歩く。

さっきまであれほど煩く感じていた音は聞こえない。

聞こえるのはかごめの声だけ。

さっきまであれほど感じていた様々な匂いは感じない。

感じるのはかごめの良い匂いだけ。

さっきまで何も握っていなかった俺の手ははぐれるといけないからと言ったかごめの手と繋がっていて、そこからはただ暖かさだけを 感じた。


2007,10,16