「おまたせ」

犬夜叉との待ち合わせまで急いでかけてきたかごめに対して

「遅え」

と犬夜叉は少しイラつきながら答える。

「だから先に帰って良いって言ったのに…」

「うるせえ」

「もぅ」

困ったなぁとかごめが考えていると

「かごめ、帰るぞ」

歩きながら犬夜叉に言われる。

「待ってよ」

と言いながらかごめは犬夜叉に向かって歩き出した。


バレンタイン


月は2月。
まだまだ寒い日が続いているが、人々は少しずつ、盛り上がりはじめる。
ある者はお菓子作りの本を読みあさり、ある者はのチョコレ−トを買い込み、街中には甘い匂いが
立ち込めはじめる。
そう、たとえお菓子業界の策略であろうと、陰謀であろうと、それに踊らせられていると知りつつも、
踊らされたい人々が自ら踊るイベント、バレンタインである。
そして、ココのカップルも例外ではない。

「犬夜叉」

「何だよ」

「この中のチョコならどれが良い?」

と鞄の中から取り出した【美味しいお菓子の作り方100選】などという本の付箋がついたページを差し出しながら
かごめが聞く。

「チョコだと?」

なんでチョコなんか・・・と内心思いながらも犬夜叉一応本に眼を通す。

「エリちゃん達と作ろうって言ってるの。14日に作って渡しに行くから」

「…」

「ね、どれが良い?」

「…いらねぇ」

「え?」

犬夜叉からの想像していない言葉にかごめは驚く。

「だから、いらねえって言ったんだよ」

「何で…」

「俺はチョコとか甘ったるいもんは好きじゃねえし、14日は試合があるから帰りが遅えしな。どうせならポテチとか
 ラ−メンとかくれよ」

その言葉を聞いたかごめは

「犬夜叉の…馬鹿−!そんな物は桔梗にでも貰えば!!」

と怒鳴る。

「な…かごめ!」

「犬夜叉のバカ!!」

「待てよ、かごめ!」

「おすわり−!」

ビクッ

犬夜叉の身体がおすわりという恐怖の言葉で固まった隙にかごめは走ってその場を離れた。

「…行っちまいやがった。…何だよ、かごめのやつ…やっぱり俺が悪ぃのか…」

と犬夜叉が考えていると

「あ、犬夜叉!」

という声が聞こえたので犬夜叉は

「だれ…!!」

と振り返り、相手を確認した途端に全速力で逃た。
しかし、所詮それは無駄な抵抗で
ガシッ
と誰かが全速力で走っている犬夜叉を捕まえた。

「人の顔見るなり逃げるなんて酷ぇなぁ」

と犬夜叉を捕まえた蛇骨が言う。

「放しやがれー!!」

と叫ぶが

「ヤダ。放したら犬夜叉逃げちまうもん」

と即答される。

「当たり前だ!」

「え〜、酷えな〜」

「違くねえ!って蛮骨!何のんびり見てやがんだ!」

「相変わらずだと思ってな」

と蛮骨はのんびり答える。

「さっさと何とかしろ!」

と犬夜叉は叫ぶが

「俺には関係ねぇから」

と面倒くさそうに言われる。

「てめぇ…」

「蛮もああ言ってるし…」

蛇骨が楽しそうに犬夜叉に話していると

「好い加減にしろ、ジャコ」

という声がした。

「あ、煉兄。何でいんの?」

蛇骨が不思議そうに煉骨に尋ねると

「それはこっちの台詞だ。何でこんな時間までお前等がいる?」

と聞かれたので

「「部活」」

と息ピッタリに2人は答える。
それを聞いた煉骨は

「遊びか」

と決め付けて話す。

「え〜、部活って言ってるじゃん」

と言う蛇骨の反論にも

「お前等が真面目に部活なんかやるわけねえだろ」

と何やら酷い理由で否定する。

「そうだな!」

と変なところで納得する蛇骨に呆れながら蛮骨が

「ジャコ、一応俺達馬鹿にされてんだぜ?」

と言うが

「そうなの?」

と当の本人は全く分かっていない。

「「「…」」」

「まあ良い。帰るぞ」

と煉骨が言う。

「犬夜叉も一緒で良い?」

「犬夜叉を連れて帰って何する気だ?」

「え〜、イロイロ?あ、蛮には面倒かけないから」

「俺にはかける気かっ!」

「あ−…かけるかも」

「今すぐ犬夜叉を掴んでる手を放せ」

「え〜」

「放さなかったら今日の夕飯はお前だけ特別料理にしてやる」

「え…」

「何が良いかな…」

とある意味漫才をしているようにも見えなくも無い2人の兄を見ながら

「煉骨、お前段々ジャコの扱いが上手くなってきたな」

と少し笑っているようにも見れる表情で煉骨に言う。

「慣れてきたからな」

と少し疲れたような表情の煉骨が答える。

「じゃあ、ついでにすい骨の扱いにも慣れてくれ」

と蛮骨が言うと、何を思い出しているのかは知らないが、もの凄く暗く、青い顔をしながら

「……無理だっ!!」

と煉骨が叫びにも近いと思われる声で答えた。


犬夜叉と別れて帰って来たかごめはというと、自分の部屋のベットに寝転がりながら買ってある材料を見ながら呟いていた。

「犬夜叉の馬鹿。ちっとも私の気持ち分かってないんだから。まぁ、それが犬夜叉なんだけど…。
 チョコ…どうしよう。作っても食べてくれないなら意味が無いし…でも材料買っちゃったし…困ったなぁ…」


――2月14日――

パァンッ

「胴−!」

「「はぁ、はぁ」」

「そこまで!互いに礼」

「「有難うごさいました」」


「疲れた・・・」

更衣室のベンチに腰掛けて水分補給をしている犬夜叉に部活の友人が声をかける。

「負けちまったけど相変わらず凄えな、犬夜叉。マジで部活入るまで剣道やった事なかったのかよ?」

「あ−…かなり昔に我流でやってたな」

「我流でここまでできるって凄えな!何でやりはじめたんだ?」

そう聞かれた犬夜叉は少し苦しそうな顔をしながら

「…必要だったから…だな」

とだけ答えた。

「?」

聞いた友人がよく分からないという顔をしている中で

「あ、もうこんな時間か。さっさと着替えて帰ろうぜ」

と言って犬夜叉は荷物を持って立ち上がった。


「寒ぃ…」

「まだまだ冬だからな。あ、ラ−メン食って行こうぜ」

「おう」


ズルズルズル

注文したラーメンを2人は黙々と食べる。
そんななか不意に

「それにしても、今日が試合だなんてついてないよな」

と犬夜叉の友人が言い出す。

「?何かあるのか?」

全く分からないといった感じでかえす犬夜叉に友人は呆れながらも

「は?今日はバレンタインだろ?あ−、犬夜叉は日暮からもう貰ってるとか?」

と少々の皮肉を込めて返す。

「貰ってねえけど…!」

そう言った犬夜叉は数日前のかごめの言葉を思い出す。

『14日に作って渡しに行くから』

「あ…」

「どうした?」

「悪ぃ、帰る!」

それだけ言うと犬夜叉は食べかけのラーメンもそのままにし、荷物を持って駆け出した。

「な、ここの会計どうすんだよ!犬夜叉!!」

などと言う声は犬夜叉には聞こえていなかった


「寒い…犬夜叉遅いなぁ…」

犬夜叉宅の前でずっと帰りを待っていたかごめが呟いていると

「かごめ!何してんだよ!」

と走って来たであろう犬夜叉に聞かれる。

「…チョコ」

「?」

「チョコ持って来たの」

「何で…」

「犬夜叉に食べてほしいからに決まってるじゃない!」

ここまで言って何で分からないのよ!!
と内心思いながらもかごめはその事は口には出さずに違う事を言う。
それも本心ではあるのだから。

「…」

無言のまま犬夜叉はそっとかごめの手に触れる。

「!」

「こんなに手が冷たくなるまでココにいたのか…」

困ったという表情の犬夜叉に少し戸惑いながらも

「試合だって言ってたから…」

とだけ告げる。

「・・・悪かったな」

「何が?」

何を言っているの?とかごめは首をかしげる。

「こんなに待たせちまって」

「…」

「それに、こないだチョコいらねえなんて言って」

「…」

「有難う…な…」

そう言って素直に謝る犬夜叉に驚きながらも

「素直だね」

とかごめは本心を言う。

「あ、あのなぁ!俺だってたまには素直に謝ったり…したり…だから、えっと…あ−!だから…」

困っているようで、怒っているような微妙な表情で喋る犬夜叉の言葉を遮るように

「HAPPY BARENTAIN」

と笑いながら告げてチョコの包みを差し出す。

「!」

「ね?」

「ああ・・・」

かごめには敵わないと思いながら犬夜叉は差し出されたチョコを受け取った。


「甘ぇ!」

「甘さ控めで作ったつもりだったんだけど…」

「甘すぎる・・・」

「…」

「大体チョコってのは…」

「・・・一生懸命作ったのに!!犬夜叉の・・・・・・馬鹿−!!」


2005,2,14