「ここ、いい?」
「あぁ」
宿敵の奈落を倒すべく奈落の元へと向かっていた犬夜叉一行だったが、運悪く朔の日に当たってしまい、
弥勒の怪しげな占いで地主の家の一部屋を貸してもらうことになった。
夜も更け、春といってもまだ外はとても寒い中、犬夜叉は一人で小河にいた。
犬夜叉が部屋にいない事に気付いたかごめは犬夜叉を探し、見つけた犬夜叉の隣へと腰を下ろした。
最後の夜
2人共何かを言うわけではなく、ただ黙って星空を見上げる。
2人の吐く息は白い。
「かごめ」
「何?」
「怖くないのか?」
犬夜叉の言葉にかごめは少し驚いたが、直ぐにその表情をいつものものへと戻した。
「怖くないって言ったら嘘になるよ。桔梗の光は琥珀君の中で、奈落は完成された四魂の魂を使ってるし、
私は霊力が戻ってないし」
「・・・」
「でもね、私は奈落を許せない。桔梗を死なせて、珊瑚ちゃんの家族を殺して、弥勒様のお爺さんに風穴を開けて、犬夜叉を・・・
殺そうとして・・・」
かごめはそこで一瞬ぶるりとふるえ、言葉を切った。
「だから私は奈落を倒すって決めたの」
真っ直ぐに犬夜叉を見て言うかごめの瞳には強い信念が宿っているのを犬夜叉は感じた。
犬夜叉自身迷っている部分があった。
唯でさえ厳しい戦いなのに、今霊力の封じられているかごめは井戸の向こうの安全な世界にいたほうが良いのではないか
・・・と。
それを見透かしたようにかごめは言った。
「犬夜叉、私はね、自分で奈落と戦うって決めたの。だから犬夜叉は気にしなくて良いんだよ」
その言葉に犬夜叉は自分の中の迷いが消えていくのを感じた。
「かごめ、ありがとな」
「どういたしまして。・・・ねぇ、犬夜叉」
「ん?」
「約束・・・して」
「約束?」
「絶対に奈落を倒して、楓おばぁちゃんや琥珀君のいるあの村へ帰るって」
「・・・」
「約束して」
グラグラとした不安定な位置に立っていることは犬夜叉もかごめも良くわかっていた。
一瞬でも気を抜けば底なし沼のように底のない永遠の闇に絡め取られてしまうことも。
だからこそかごめは約束という希望に縋ろうとした。
自分達を導く一筋の光を求めた。
「あぁ。約束だ」
「うん、約束ね。ぁ、朔が明けるよ」
「あぁ、そうだな」
凍えそうな寒さの仲、繋いだ手を離すまいと2人は固く手を握り合った。
2008.1.11
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