「甘楽さん、甘楽さん!」

「甘楽さんっ」

「津軽まで慌ててどうしたの?」

「「ハロウィンやりたい!」」

駆け寄ってきた津軽とサイケは甘楽に抱きつきながら目を輝かせて言った。


HALLOWEEN


「ハロウィン?お菓子が欲しいの?」

素早く回転した甘楽の頭の中でハロウィンに関して様々な知識が浮かび上がる。

しかし、どこでズレが生じたらしく、甘楽の口から出てきたのは解答としてはギリギリ及第点なものだった。

「違うよ。仮装して、俺と津軽と甘楽さんとシズちゃんと新羅とセルティでパーティするの!」

にこにこと甘楽に抱きつきながら笑顔で告げらたサイケに、反対側に抱きついていた津軽が淡々と尋ねる。

「臨也はどうするんだ?」

「一人鍋でもすればいいんじゃないかな?ね、やろうよ、甘楽さん!」

さらりと酷いことを言っているにも関わらず、サイケの表情はまるで天使のようで、その場にいたのがサイケをよく知る者でなければ聞き間違いだと思ったに違いない。

「他のメンバーが良いって言ったらね。後、一応臨也にも言ってよ」

「…」

甘楽の言葉が不服らしく、嫌そうにするサイケに笑いながら、甘楽は津軽へと告げる。

「津軽、言っておいて」

「はい」


遅れてやって来た臨也が静雄と視線をあわせるやいなや、臨也も静雄も互いに嫌悪感を表す。

「何〜でシズちゃんがいるのかなぁ?」

「新羅ん家でパーティやるって聞いたんだよ」

「誰に?」

「津軽」

「津軽、何でシズちゃんなんか誘ったの?」

「甘楽さんが、誘えって…」

臨也の殺気に対して何の反応も示さずに淡々と津軽は答え、臨也は次に甘楽へと言葉を投げる。

「甘楽、どういう事?」

「そもそも最初に言い出したのはサイケで、その時の臨也は呼ばないつもりだったみたいだけど?」

パーティの支度をする手を止めること無く告げられた甘楽の言葉に、矛先がサイケへと向かう。

「サイケ?」

「だってシズちゃん呼ぶのに折原臨也を呼んだら喧嘩になるんだもん」

「それはいえてるよね。君達犬猿の仲だし」

サイケに同意するように新羅が言い、その言葉に臨也は少しだけひきつった笑みを浮かべる。

「だったら俺を呼んでシズちゃんを呼ばなきゃいいでしょ」

「シズちゃんは呼びたかったの!」

自身と同じ顔で睨み付けられようとも全く堪えることなど無く、むしろそのサイケの態度に苛立つ臨也にセルティがPDAで制止の言葉をかけても効果は無い。

「とりあえず、ここで喧嘩は禁止。喧嘩したら津軽が強制的に追い出すから。津軽、頼める?」

「はい、甘楽さん」

「だってよ、シズちゃん」

「話し掛けんな」

甘楽と津軽のやり取りに臨也は不快感を感じながらも、静雄をからかおうと声をかける。

それを拒絶すると、静雄は苛立ちを抑えようと煙草に手を伸ばす。

「酷いなぁ。ところで甘楽、その格好何?」

「津軽とサイケが仮装するって言うから手伝ってたらいつの間にか…」

「甘楽さんは魔女で、俺は吸血鬼で、津軽は狼男!」

仮装の内容を楽しそうに語ったサイケに続いて新羅が語り出す。

「ちなみに私は医者で、セルティは看護師だよ!医者と看護師…なんて素敵な響きなんだろう!」

【これって仮装か?】

「仮装だよ」

「いや、コスプレだよ。新羅に至ってはコスプレですらないけど」

セルティの疑問を一刀両断した新羅に、臨也が突っ込みを入れるが、新羅は既に自分の世界に旅立った後で、1人でセルティの素晴らしさを語っている。

「セルティの黒のナース服もいいだろう?黒い服から覗く白い手足がなんとも艶かしく、エロティズムを感じさせるのさ!」

【だまれ新羅!恥ずかしいことを言うな!】

「恥ずかしがることなんてないよ。セルティは最っ高の存在だ!」

【新羅っ!】

「あぁ怒った顔も素敵だね」

【新羅、いい加減にしないと本気で怒るからな】

「セルティになら怒られても幸せだよ。なんたってセルティは世界一…いや、宇宙一可愛いから!」

新羅がセルティへの留まる所を知らない愛を叫び続けている中に、サイケが割り込む。

「甘楽さんだって負けてないよ!甘楽さんの魔女は綺麗で可愛いんだ!甘楽さんの綺麗な黒髪と白い肌が目立つように服の色はわざと紺にしたし、必要以上に肌が見えないようにスカートも長くしたし、飾りは羽とか植物を使ったし!」

新羅に負けず劣らず、甘楽の魔女姿ががどれ程似合っているかを力説するサイケの言葉を臨也は初めは聞き流していたが、その中に聞き流せない言葉を見つける。

「ちょっと待て。まさか甘楽の服はお前逹が作ったのか?」

「サイケが、全部」

「甘楽?」

「知らぬ間に…」

1〜10まで言わずとも、臨也と甘楽にはお互いの言いたいことがわかる。

甘楽自身には服のサイズを測られた記憶は無いのだが、今着ている服が甘楽のためだけに作られたことは明らかだった。

だからといって甘楽には記憶がないのだから、臨也の求めている説明をするのは不可能である。

「似合ってるよ、甘楽さん!」

「似合ってる」

「シズちゃんもそう思うよね?甘楽さん綺麗で可愛いでしょ?」

「ぁ…まぁな」

いきなり話題をふられた静雄は驚きつつも、甘楽を見て、少し曖昧な返事をする。

しかし、臨也にとってはそれも気に入らない。

「ちょっとシズちゃん、甘楽に色目使うの止めてよ」

「色目なんて使ってねぇだろ!」

「使ってるよ!」

静雄にしてみれば聞かれたから答えただけで、服が似合っていると友人に言った…ただそれだけなのだが、臨也にとってはそうではない。

津軽と静雄はどうなのかは知らないが、女性に服を贈るというのはそれを脱がせたいという欲が混じっていると言われている。

サイケは確実にそれを知っていて、言葉にそれを乗せている。

それをやっているサイケも、気付かずに乗せられている静雄も臨也は気に入らない。

「んなわけねぇだろ!」

「へ〜じゃぁシズちゃんは甘楽の事女性として全く見てないって事だね」

「当たり前だろうが!!」

「静雄、臨也にのせられてるよ」

「あ?…いや、えっと…」

新羅の指摘によって、静雄は自分が何を言ったのかに気付く。

居心地の悪さを感じながら甘楽を見れば、甘楽は怒っても、困ってもいない。

「別に女として見てくれなくてもいいよ。友人として見てくれてるなら」

「あははっ!甘楽最高だよ、ソレ!」

「黙れノミ蟲」

「酷いなぁ」

甘楽の言葉に爆笑うする臨也を静雄は睨み付けるが、それで臨也が怯むはずがない。

「シズちゃんもっと言ってやれぇ!」

「お前は黙りなよ」

「津軽〜折原臨也が酷いよ〜」

「よしよし」

臨也の言葉に傷付いたふりをしながら津軽に甘えるサイケを見て、一瞬で臨也に寒気が走る。

「ちょっと津軽、シズちゃんの姿なんだからサイケに触るなっていつも言ってるだろ!」

「ぁ…悪い」

「謝る必要なんてないよ!恋人同士がラブラブなのは仕方ないんだから」

「おい、俺とノミ蟲の姿で抱き合うな。気色悪ぃ」

酷い〜と頬を膨らませながら文句をいうサイケは外見を見れば間違いなく可愛いのだが、臨也と静雄にとっては気持ちの悪いものでしかない。

文句を言っていたサイケだったが、不意に良い事を思い付いた!と言って静雄を見る。

「ウィッグ付けようか?そうすれば外見は甘楽さんだよ!」

「それならまぁ…」

「却下!甘楽とシズちゃんの姿で恋人とか許さないからね!」

サイケが長いウィッグを付けた姿(身長以外は限りなく甘楽となる)を想像し、それならばと思った静雄とは反対に、臨也は力強く却下と述べる。

「別に折原臨也に許してもらわなくたっていいよ。良いよね、甘楽さん?」

「…好きにしたら?」

成り行きを静観していた甘楽だが、唐突に振られた言葉にも焦ること無く冷静に返す。

「わ〜い!ありがと、甘楽さん」

「何で許すかなぁ…兎に角、俺は絶対そんなの許さないから」

「津軽〜後でウィッグ買いに行こうね?」

「わかった」

「ちょっと、俺の話し聞きなよ!しかも津軽ととかふざけるな!」

自分を無視するのはともかく、津軽に抱きついているというのも、仲良さげに話しているのも流せる事ではない。

「行くなら1人で行け」

「ぇ〜」

「シズちゃん、余計な口出ししないでよ」

「うるせぇ!てめぇの指図は受けねぇ!」

「指図なんて言葉知ってるの?随分利口になったじゃないか」

「黙りやがれっ!」

いつものように騒がしくなった臨也と静雄と、その2人と話している津軽とサイケをよそに、新羅とセルティと甘楽は料理をつつき初める。

「へぇ。これ甘楽が作ったんだ」

「波江さんに頼むのは悪いからね」

「甘楽の料理なんて久しぶりだよ」

「あんまり作らないからねぇ。で、こっちがセルティ」

「ぇ!?」

【し、新羅に食べてほしくて…甘楽に味見してもらったから味は大丈夫なはずだ!】

目を輝かせる新羅と、反対に自身なさげなセルティの文字と共に揺れる影。

しかし、新羅は満面の笑みを崩さない。

「セルティありがとう!食べさせてもらうよ!」

【口に会うといいんだが…】

「セルティが作ってくれるなら口に会うに決まってるよ!」

【新羅っ…】

片方は今にも殺し合いが始まりそうな口喧嘩をし、もう片方はそれに口を挟みながらも仲が良さそうにしているという外見はそっくりなのに正反対な2組と、周りなど全く見えていないバカップルを視界に入れながら、甘楽はため息をついた。



2011.10.30