ペンを動かす音と連動するかのように微かにシャランという独特の音が鳴る。

普通の人間ならば近くにいなければわからないであろう僅かな音も、人間ではない彼らの耳にはしっかりと聞こえていた。


独占欲


「甘楽さん、甘楽さん。腕に何かつけてる?」

「ぇ…あぁ。煩い?」

「そんなこと無いよ。ただ、何の音かなぁって」

「気になります」

「津軽とサイケは見たこと無かったかなぁ、これ」

甘楽がインナーの袖口を少しだけ捲ると、ブレスレットが見える。

「綺麗なブレスレットだね。でも、いつも付けてた?」

「ありがと。大体いつも付けてるよ。私にとっては指輪とセットだから」

「気付かなかった」

「甘楽さんが買ったの?」

「臨也からのプレゼント」

「…」

「臨也からの?」

「誕生日プレゼント」

「ブレスレット贈るなんて独占欲強いよね。甘楽さんは折原臨也のモノじゃないのに!」

「独占欲?」

「【自分だけのモノって思い】だよ」

「なら、甘楽さんは誰のモノ?」

「誰のモノでもないよ。でも、サイケも知ってるんだ」

「何を?」

「【束縛アイテム】ってやつ」

「うん」

「私はこのブレスレットを貰った時まで知らなかったんだよ」

「そうなんだ…」

「サイケ、束縛アイテムって何だ?」

「アクセサリーって元々宗教とか政治関係のモノから由来が来てるから、物によっては独占欲を表す事もあるんだよ。例えば、ネックレスは首輪、ブレスレットは手錠、アンクレットは足枷、指輪は普通に結婚を意味してるらしい…まさかその指輪も…」

「これは自分で買ったよ」

「よかった…でも、知ってるなら何で付けてるの?ガーネットとエメラルドって明らかに甘楽さんを意識してるじゃん」

「初めはガーネットだけだったんだよ」

「初めは?」

「これって自分好みにトップをつけられるみたいだから」

「へぇ…なら、全部?」

「そう。全部臨也から」

「独占欲丸出しだよ。ねぇ、津軽」

「…」

「津軽?」

「どうしたの?」

「音が出るやつ、前は無かった」

「昨日貰って付けたからね」

「…お願いが、あります」

「珍しいね。何?」

「それ、外してくれませんか?」

「ブレスレット?」

「ふるふる」

「このトップ?」

「こくこく」

「ぇ、何で?」

「こそこそ」

「!あのね、甘楽さん。その音って綺麗な音なんだけど、俺達にはこの家にいると常に聞こえてて、ちょっと辛いんだ。だから…駄目かな?」

「…そういう事なら仕方ないね」

「ごめんね」

「ごめんなさい」

「気にしないで」

「今度俺達が代わりのモノ贈るね!」

「贈ります」

「…楽しみにしてる」



2012.05.04