池袋の某所にあるカフェ。
少し入り組んだ場所にあるにも関わらず、連日多くの客が訪れる。
そのカフェの名前は、デュラカフェ。
「お待たせいたしました、オムレツです」
「ケチャップでハート書いてください!」
「申し訳ございませんが、当店ではそのようなサービスは行っておりません」
「えぇ〜」
「申し訳ございません」
「次こっちオーダー」
「只今まいります」
「ご注文どうぞ」
「このカレーと…」
デュラカフェで働いているウェイターは皆格好いい(もしくは可愛い)と言われるような顔立ちをしていて、執事喫茶やメイドカフェではないものの、そのようなサービスを
求める女性客が後を絶たない。
「いやいや本当だって。後でお茶しない?」
「ま、正臣〜」
「帝人君あたふたして可愛いね」
「ぇ、ぇ…」
「帝人君も正臣君もそのくらいにしてよ。次のお客さんいるよ?」
「じゃあ失礼します」
「失礼しま〜す」
それぞれにあった挨拶をして帝人と正臣が席から離れると、臨也も一礼して席を離れる。
「オーダーいくよ。トマトパスタ、オニオンスープ、カレー、オレンジジュース、ケーキセット、プリン」
「わかった」
「シズちゃんもフロア出ればいいのに」
「俺は接客とか向いてねぇし、料理作るやついなくなるだろ」
「帝人君も正臣君もドタチンも出来るよ?」
「とにかくやらねぇ。ほら、チーズケーキ」
「はいはい」
キッチンを任されているのは静雄で、静雄が出られない場合は他の人が担当している。
フロアを仕切るのは臨也の役目だが、あまり仕切って何かをすることはなく、個々に任せている。
それはウェイターそれぞれが己の味を活かすことにも繋がっているため、文句を言う人間はいなかった。
デュラカフェ
フロア担当の主要メンバーである臨也、新羅、門田、帝人、正臣はそれぞれに常連の客を抱えていて、ある種のホストだと言われても仕方がないような状態だった。
その理由はこのカフェ独自の形態にも理由があるかもしれない。
このカフェはとにかくイベントが多いうえに、ウェイター達がきめ細やかな対応をする。
それが客の要望を満たすことに繋がり、常連客が後を絶たないのだ。
もちろんそれは料理やドリンクの味が良いという大前提のうえの話であるが。
そんな状態なので、フロア担当は客の携帯番号やアドレスをよく貰う。
その後どうするかは個人の判断になるので臨也は何か言うことはなかったが、静雄がキッチン担当で良かったと密かに思っていた。
それでも、何かのイベントで見た静雄目当ての客もいるのだが。
1日の締めである掃除と売り上げ計算を終えて臨也が更衣室へと入ると、そこには既に静雄の姿がある。
臨也はこっそりと近付き、自身に気づいていないだろう静雄の肩を叩く。
振り向いた静雄は、臨也の差し出していた指に頬を当ててしまう。
「い…イザヤてめぇ…」
「怒らないでよ。それより見て、見て!女の子にこんなに沢山携帯番号貰っちゃった」
扇子を広げるように色とりどりの紙を広げた臨也に対して、静雄は興味がなさそうに視線を逸らす。
「へ〜よかったな」
「もっと他の反応無いのかなぁ」
「ねぇよ」
「はぁ…」
静雄の反応が予想通りだったことに内心安堵しつつ、それを悟られないように臨也はいつもの調子で応じる。
「臨也、静雄、帰るよ〜」
「今行くよ」
新羅の声に返事を返し、脱いでいた制服をロッカーに仕舞い込んでファーコートに携帯と財布を入れる臨也の横で、静雄も上着に袖を通す。
早番だった帝人と正臣の鍵が返却されていることを確認し、外で待っている新羅と門田の元へと2人は急いだ。
「もう4月なのに寒いよね」
「異常気象らしいぞ」
「だろうねぇ」
臨也、静雄、新羅、門田の4人で夜道を歩く。
4月になってはいるものの、夜道はまだ寒く、異常気象というニュースを聞いていれば、更に寒く感じる。
「肉まん食いてぇ」
「流石に売ってないだろ」
「売ってるよ。うちの近くのセブンにはあったから」
「シズちゃんが言うから肉まん食べたくなっちゃったじゃん。責任とってシズちゃんが肉まん奢ってよ」
ファーコートを翻しながら臨也は笑顔のまま静雄に言うが、静雄は嫌そうな顔をして臨也を見る。
「何で俺がんな事しなきゃいけねぇんだよ」
「いいじゃん、いいじゃん」
「嫌だ」
言葉の応酬をしている2人から少し離れた位置で、新羅と門田はのんびりと会話しながら2人を見守る。
「門田君は何味が好きなの?」
「すき焼き」
「独特だね」
「そうか」
「うん」
「新羅、ドタチン、セブンあるよ」
「早く来い」
「行こうか」
「あぁ」
結局は息が合う臨也と静雄の様子に笑いながら、新羅と門田はセブンに向かう臨也と静雄を追いかけた。
2012.04.03
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